「二塁手」大和が、攻守で存在感あるプレーを連発した。阪神大和外野手(27)が上本の負傷離脱によって、12試合ぶりの二塁出場。打っては5回に同点打。守っても好プレーで投手陣を盛り立てた。チームの総合力が問われるシーズン最終盤。大和が緊急事態の虎を救ってみせる。

 「急造」という肩書は外した方が良さそうだ。青空にオレンジ色が差し込み始めた夕刻以降、二塁手大和が美技を連発した。仕上げは同点の延長12回表2死二、三塁。一、二塁間に転がった1番丸の当たり損なったゴロに素早くチャージ。難なく一塁へのクイックスローを決め、間一髪のタイミングでヘッドスライディングした俊足に先んじた。

 大和 守備でミスがなかったのは良かったです。

 試合開始3時間前、上本が左太もも裏負傷のため練習を早めに切り上げた。11戦連続で二塁先発していた選手会長の登録抹消。頼れるのは大和しかいない。上本が離脱していた8月中旬に1度は二塁を主戦場としたが、先輩の復帰後は本職の中堅にリターン。この日、8月27日広島戦以来12試合ぶりの二塁守備を任されると、完璧に勤め上げた。

 和田監督 際どいプレーも多かったけど、しっかり守ってくれたね。

 延長10回表2死では丸の二遊間ゴロに飛びつくも、一塁送球は間に合わず。11回表1死、今度は快足野間の二遊間ゴロをバックハンドキャッチし、体を流されながらジャンピングスロー。ショートバウンド送球でアウトをもぎ取った。

 大和 あれは(一塁)ゴメスの方が難しいプレー。よく捕ってくれました。

 プライベートでも“代役”をそつなくこなす。8月9日に麻理子夫人が第1子となる長男を出産。ナイターゲームのある日、朝6時に赤ちゃんがおなかを空かせて泣き始めた。せっせとミルクを作る愛妻に感謝し、眠い目をこすって立ち上がった。「あとは寝てもらって大丈夫。ミルクをあげるぐらいなら、1人でもできるから」。さりげない気遣いができる27歳。チームの危機となれば、どんな役割でも全うする覚悟だ。

 1点を追う5回2死一、三塁では戸田から左前に同点打を決めた。7回1死満塁、11回2死二、三塁で遊ゴロ2つに倒れたこともあり、試合後は「延長でもう1本続けられたら良かったんですが…」と反省。それでも6度の守備機会を完璧に勤め上げ、執念ドローの立役者となったことは紛れもない事実。再び、二塁手大和にスポットライトが当たりそうだ。【佐井陽介】