悔しさ、無念さ、喜び、最後は笑いで「キヨシ劇場」が幕を下ろした。今季限りでの退任が決まったDeNA中畑清監督(61)が3日、今季最終戦の巨人戦でラスト采配を振った。80敗目を喫して、3年ぶり最下位が決まったが、試合後のセレモニーではスタンドからの「キヨシコール」を一身に浴びた。新球団の初代監督に就任してからの激動の4年間。人気者が惜しまれながらグラウンドを去った。

 「ハマのキヨシ」が舞台から降りた。退任会見にさっそうと登場した中畑監督は、「俺はいすに座るのはちょっと好きじゃない」といつもと同じように立ったまま会見を始めた。「志半ばというのは多分にある。でも、こういった世界では、どこかでけじめをつけなければいけない。ダメな時はダメと、分かりやすい世界を目指してきた」と、今季限りで辞任することを表明した。

 かしこまった空気感が漂う会見場の雰囲気を察すると、テンションのギアを一気に上げた。「はっきり言って楽しかった。4年前はランドマークタワーに集まってもらって、契約もしていないのに就任会見をしたな」と、初代監督に就任した11年オフを振り返った。自分だけに向けられているカメラと、会見場が膨れ上がるほどの報道陣を見渡し「こういう雰囲気が大好き。またやるか?」とおどけた。

 グラウンドでのセレモニーでは真剣にファンに伝えた。「球宴まで首位でした。緊張感、喜び、怖さがあった。幸せでした。どんな展開になっても選手たちは諦めない野球をやり通してくれた。現状、惨敗です。責任は全て私にあります」。深々と頭を下げた。でも謝罪よりも感謝の思いを伝えたかった。「大した監督じゃないけど、皆さんの後押しのおかげでこれだけのチームになりました。心から感謝いたします」。もっと深く、頭を下げた。就任後、初めて勝ち越した本拠地の観客動員数は、実数発表となった05年以降初の180万人超えを記録した。

 今後についてはキヨシ節で仰天プランをでっち上げた。「無職で収入源がない。すごく不安ですが、一番の要素は歌手ですね。それで食いつないでいければと。お金になるような場所があれば提供していただきたい」と笑い飛ばした。すべての役割を終えて車に乗り込む直前だった。ポロシャツに着替えてから心境を込めて歌った。尾崎紀世彦「また逢う日まで」。また逢う日まで、逢えるときまで、別れのそのわけは話したくない♪ 「またチャンスがあれば皆さんとお会いしたいです」。監督として再度ユニホームを着る意欲を示し、堂々と去っていった。【為田聡史】

 ▼DeNAが最終戦に敗れ、12年以来24度目の最下位が決定。DeNA自身が持つ最下位回数の最多記録を更新した。5月16日には26勝15敗で貯金が11あり、42勝42敗1分けの首位で前半戦を終了したが、後半戦は20勝38敗、勝率3割4分5厘と大きく負け越し。前半戦首位チームが最下位に終わったのはプロ野球史上初めて。貯金が2桁あったチームの最下位も初の屈辱となった。