ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(31)が本来の打撃スタイルを取り戻そうとしている。目指す姿は、13年に60本塁打のプロ野球新記録を達成したフォーム。プライドは捨て、ヒント集めに模索している。8日、みやざきフェニックス・リーグの広島戦(サンマリン)に「3番・DH」でスタメン出場。4打数2安打を放った。復調の気配が、結果に表れてきた。

 球場を出る横顔に、白い歯がこぼれた。バレンティンは「マグレです」と軽快な日本語で振り返った。4打数2安打。2試合連続安打と数字を残した。笑顔を見せるものの、まだ不振から抜け出していない。「自分の中では、まだしっくりきていない」と冷静に自己分析した。求めるのは、あくまでも13年にプロ野球新記録60発をマークした自分だ。

 何とか、宮崎で取り戻したい。前日7日は、同リーグ四国IL選抜戦でバックスクリーンに本塁打を放った。素手で放ったアーチだった。「モリ(森岡)がずっと素手で打っていたからまねしてみようと思って。素手だと力みすぎてはいいスイングはできない。ちょうどいいんだ」と理由を説明した。この日の第1打席でも、素手スタイルで挑むなど、打撃向上へのヒントを模索している。

 キングのプライドは捨て、宮崎に来た。プロ13年で通算7本塁打と、スタイルの異なる森岡の打撃にも、ヒントを探している。「今はスランプではないけど、広い視野で自分の打撃を見ることが大事。遊びを入れることで、何か変わるかな」。少しでも自分にプラスと考えれば、積極的に取り入れようと必死だ。宮崎入りも、チーム本隊より2日早かった。「打撃の調子を上げたい」と真中監督に直訴。「何とかチームの力になりたい」という思いがにじみ出ている。

 課題とも向き合っている。低めの変化球に打ち急ぎ、体勢を崩されることが多かった。「突っ込み禁止。体が前にいっていた。体重を後ろに置いて打たないといけない」と分析している。この日の第3打席の初ヒットは、低めのスライダーに泳がされずに引き込んだ。

 創意工夫を凝らし、13年につかんだ“ゾーン”に近づけようとしている。兆しはある。南国の地で「キング」は復活する。【栗田尚樹】