仙台6大学リーグを沸かせた、DeNA2位指名の仙台大・熊原健人投手(22)が宮城・柴田町の同大で指名あいさつを受け、阪神の往年の名投手・村山実のような大エースになることを期待された。

 152キロ右腕熊原の全身を使って投げるフォームは、通算222勝を挙げた、あの右投げの大投手とダブった。巨人のV9を支えたDeNA吉田孝司スカウト部長(69)が言った。「躍動感がある。全身全霊というか、村山さんのようなピッチャーになってほしい」。

 98年に死去した村山氏は左足を高く上げ、全身を使って打者に向かっていった。現役時代に対戦した吉田スカウト部長だからこそ、大きな期待をかける。178センチ、85キロの熊原を間近で見て「いい体をしている。プロですぐに使える」と太鼓判を押した。

 熊原は試行錯誤しながら、大学3年に今のダイナミックなフォームを身につけ、ドラフト候補に名乗りを上げた。「指名された実感が湧いた」と話し、村山氏を「すごく足を上げる方。雑誌で見たことがある」と、名投手を覚えていた。写真撮影ではDeNAの帽子をかぶった。

 今季のDeNAは2桁勝利、規定投球回に到達した投手はいない。ドラフト1位候補の熊原を、2位指名で交渉権を獲得して「ラッキー」と言う吉田スカウト部長は「先発でやってほしい」と、新しい柱となることも願った。「先発というのはチームの勝利の7、8割を担うポジションなので、結果を出せるように」。「ハマのエース」へ熊原が本気になった。【久野朗】

 ◆村山実とは 59年の入団から阪神一筋。2代目「ミスタータイガース」とも呼ばれる。59年天覧試合で巨人長嶋茂雄にサヨナラ本塁打を打たれたのは有名。最多勝2回など通算222勝(147敗)。70年に防御率0・98を残し、戦後ただ1人のシーズン防御率0点台。セ・リーグ記録の通算防御率2・09などの大記録を持つ。72年に現役引退。阪神の監督を2度務めた。61歳の98年8月に直腸がんのため死去。