金本監督効果で大和がスラッガーに大変身!? 高知・安芸の秋季キャンプで、プロ10年で通算1本塁打の阪神大和外野手(28)がフリー打撃で5連発、合計10本の柵越えを放って驚かせた。キャンプ前から強振への意識改革をほどこしてきた金本知憲新監督(47)もうなずくナインの変身ぶり。所用で安芸を離れた指揮官が、目指す方向性の正しさを実感した。

 スタッフから景気のいい声が飛んだ。「4連発だ!」「5発目いけ!」。フリー打撃で安芸の空に気持ちよく白球が飛んだ。5連続でフェンス越え。打席の主はプロ10年目、通算1本塁打の大和だった。

 大和 ゴロを打つより、フライ、遠くに飛ばすっていうところを意識してやっています。距離も違いますし自分の中では強くなっているのかなとは思います。

 金本新監督が秋季キャンプを離れる4日目、猛虎改革を象徴するような光景だった。バットを強く振れ-。新監督が何度も強調してきた基本方針が何をもたらすかを予感させた。

 就任直後、甲子園で行われた秋季練習で指揮官が「大和の打撃が小さくなっている」と口にした。177センチ、68キロ。小兵の2番打者で「守備の人」。そんな評価に合わせるように近年は右打ちが目立った。だが、金本監督は知っていた。大和が最も輝くのは内角の球を引っ張った時だと。

 金本監督 陽川とか江越に加えて、大和も、上本も変わってますね。彼が「引っ張っていい」「右打ちにこだわるな」というのをどう感じているか。僕の目には逆に大和の良さが出始めた、元に戻ったように映っている。大和は内角を引っ張れるのが長所。試合で結果を出して初めて、よかったと言えるんですが。

 大和は、金本監督によって「レッテル」を引きはがされた。引っ張れ-。力強い、その言葉は自分を信じる勇気となったはずだ。

 金本監督 選手の体つきで方向性を決めないというかね。小さいから、振れないから逆方向(に打て)というのは僕は違うと思う。上本も引っ張るの上手だしね。イメージを持たないということですね。緒方なんかも小さくて足が速いというと、ついつい当て逃げみたいな打撃をさせるのが世の常ですけどね、あれだけ振れる力あって、パワーがあるんだから。

 もちろん進塁打を打つべき場面は指令を出す。ただ、常識を疑い、既成概念を打ち破り、新たな可能性を見出すのが改革者。就任からわずか2週間で見えた大和変身の兆しが、新監督の資質を証明している。フリー打撃終了後、大和はこう宣言したという。

 「来年は5本打ちます」

 金本監督は4日間のキャンプ指揮を終え、ひとまず安芸を離れる。だが、猛虎改革の鼓動はすでに力強く、脈打ち始めている。【鈴木忠平】

<これまでの金本監督効果>

 ◆育成・原口が奮起 10月24日、甲子園の秋季練習で監督就任後初指導。6年目の原口を「一番振れているんじゃない?」と評価し、声をかけた。11月3日の安芸秋季キャンプ紅白戦で原口は2点打。

 ◆新しい右の大砲へ 安芸キャンプスタートの1日、来季3年目の陽川内野手をつかまえ、打撃の軸回転を助言。陽川は全体練習で10本だった柵越えが、特打で41本に。

 ◆打席から注文 2日には、投手陣のボールをブルペンで打席に立って見極め。刺激を受けた来季5年目を迎える歳内が、3日の紅白戦で1イニングを3人でピシャリ。