巨人は20日、7日から行ってきた宮崎での秋季キャンプを打ち上げた。高橋由伸監督(40)が足しげく通ったブルペンでは、若き左腕たちが猛アピールした。公文克彦投手(23)はブルペン皆勤賞で、育成の田原啓吾投手(21)は唯一の1000球超えを達成した。高橋監督版「レフティーズ」の競争を勝ち抜けば、いずれは侍ジャパンの一員へと未来も開けてくる。

 下がりっ放しの目尻が、満足度を証明していた。秋季キャンプを離脱者なしで終えた高橋監督は「来季にどういう結果が出るかが楽しみなキャンプができた。内容も量も質も十分できたと思っています」と、ほおを緩めた。監督が最も目を引いた選手は誰だったのか。「それぞれが高い意識でやっていた」と個人名に言及せず、笑顔で全選手をたたえた。

 MVP級のアピールを見せたのが、若きサウスポー集団だった。高橋監督は「たくさん投げている姿を見て、僕の目が監督の目になってくれれば」と、時間を見つけてはブルペンに通った。現役時代は「打者としての目慣らし」が目的だった場所で、初めて投手をじっくり観察した。

 ほとんど見たことがなかった若手に、熱視線を送った。中継ぎ候補として参加した変則左腕の3年目の公文は「毎日投げることに意味がある」と、全日程でブルペン入りした。成長著しい育成選手の田原啓も「アピールする立場」と、計1105球の熱投でキャンプ抜てきに応えた。

 公文、田原啓に加え、高木京、今村、戸根、田口。今キャンプに参加した投手13人のうち、20代の左腕は6人。一緒に汗を流した内海のほか、ポレダに山口、リハビリ中の杉内ら、実力者を押しのけなければ出番はない。尾花投手コーチは「もっともっと若手が出てきてほしいね。早く1軍に割って入ってくるといい」と言った。巨人での激しい左腕競争をのし上がった先には、球界屈指のレフティーの称号を手にする可能性も十分にある。

 高橋監督は「たかが2週間とも思っています。そう簡単に全てが変わるとは思わない。練習に点数はないですけど、来年結果が出なかったら、0点とは言わないですけど…」と、キャンプの成否は来季に出ると言った。それでも、新芽の息吹を感じる、宮崎の秋になった。【浜本卓也】

 ◆日本球界の左腕事情 プレミア12の侍ジャパンには、中日大野と楽天松井裕しか選ばれていない。各球団ともベテランのサウスポーは活躍しているが、若手で球界を代表する左腕が出てきていないのが現状。今季の規定投球回数をクリアし、防御率で上位10位に入った日本人左腕は、セ・リーグでは中日大野だけ。パ・リーグは10傑におらず、日本ハム吉川の12位が最高順位だった。2年後には第4回WBC、2020年には東京五輪が控える。巨人の若手左腕が成長を遂げ、侍ジャパンを救う存在となれるか。