「不動」の右足で不敗神話を築く。楽天の松井裕樹投手(20)が23日、コボスタ宮城の室内練習場で自主トレを公開した。このオフから取り組む進化形フォームは、ヤンキース田中らとの合同自主トレを経てさらに熟成された。日本一のために40セーブという大目標を掲げた守護神2年目を、昨年以上のシーズンにする。

 マウンドの上に、動かぬ証拠が残っていた。ブルペンで松井裕が投じたのは全34球。左足の一本軸に乗せた全体重を、着地する右足で受け止める。左腕を振り切った後も、踏み出した右足スパイクは動かない。直球、スライダー、カットボール、チェンジアップ。赤土に残った右足の掘り跡は、わずかにスパイク2足分程度だった。「右足が固定されているように見えたなら、それはオフに行ったトレーニングが身についてるんだと思います」。守護神2年目の進化を端的に伝えた。

 余裕を残した腕の振りから、力強い球を投げる。フル回転を想定して、今オフは「効率」というテーマを追い求めてきた。「思い切り投げるのもいいんですが、やっぱり連投をしたい。80%の腕の振りで120%の球がいけば打者は感覚が狂うし、効率もいい」。年間を通じて活躍するために、踏み出し足の安定は重要な要素の1つだった。「ここが安定すればコントロールも安定して球数も疲労も減る。1試合で1球ずつ多く投げれば、年間では70球近く多く投げることになる」。1球の無駄をも削り出す姿に責任感があふれる。

 右足かかとでの接地を意識して、左下半身に蓄えた力を余さず、ボールに伝える。ヤンキース田中との合同自主トレで、助言を受けながら追求してきた部分だ。「田中さんの技術的なアドバイスを、少しでも吸収できていたらいいと思います」。丁寧な確認作業を経て、新フォームは熟成を増した。

 新年が始まっても、昨年11月のプレミア12で味わった悔しさだけは忘れられない。「田中さんからも言われましたが、あの失敗を自分の力にしなくては意味がない。苦い思い出は体、心に刻んでやってきた。シーズンを通しての結果で表したい」と決意する。今季は40セーブに加え、救援失敗なし、防御率0・75以下という大目標を掲げた。「去年は失敗してしまったので、今年はノーミスでいきます」。頂を目指せるだけの土台はある。【松本岳志】