「やってしまった!」。試合後に目が合うと、そう言ったのは木浪聖也だ。前日17日の昇格から2試合連続スタメン。しかし2点リードの8回、2番手ドリスの代わりばな、佐々木泰の飛球を追いながら落としてしまった。
それが影響し、この回、広島に1点を返される。それでも及川雅貴から工藤泰成のブルペンで1点差勝利にしのいだ。勝てたからこその木浪の“嘆き”でもあっただろう。しかしプロをかばうつもりもないが甲子園の内野に上がる飛球は難しいのだ。ここは反省し、次に向かってほしい。
飛球に関し、もう一つ注目したのは5回表。この回、広島の先頭は坂倉将吾だった。そこまで完全投球を続けていた先発・大竹耕太郎の5球目にバットを出した打球は三塁後方に高々と上がる。
左の強打者を打席に迎えていたとあって左翼手・前川右京は深く、かつ中堅よりに位置していた。これは捕れない。遊撃の木浪も同じく二塁ベース寄りに守っていた。微妙な当たりだ。ポテンヒットか。そう思ったがサード佐藤輝明が深々と追い、芝生の切れ目当たりでキャッチした。
長く甲子園の阪神戦を見ているつもりだが、あの深さまで三塁手が追う光景はあまり記憶がない。レジェンド金本知憲が左翼を守っていたとき、遊撃の鳥谷敬(現日刊スポーツ評論家)が深いところまで追っていたのは覚えているがサードが同様の動きをするのはめずらしいのではないか。
「(テルは)フライを捕るのがうまいからね」。内野守備走塁コーチ・田中秀太はそんな話をした。確かに送球が乱れることはある佐藤だがフライを落とす場面は見たことがないような気もする。すべてを覚えているワケではないが秀太が言うように外野も経験し、飛球処理には自信を持っているのかもしれない。
何より「いいな」と思うのは、その動きに佐藤にチームの中心としての自覚を感じたからだ。この日も先制決勝打を放ったが4番を打っているだけではそうはならない。しっかり守ってこそ、そういう存在として見ることができるのだ。当たり前だが、すでに佐藤はその域に達しているのだろう。それを実感した。
「チーム全体で戦っていきたいし。ファンのみなさんも含めて」。指揮官・藤川球児はそう言った。その中心にいるのは、やはり、佐藤だろう。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




