エースへの道は一直線! ソフトバンク武田翔太投手(22)が2日、宮崎春季キャンプ中の「変化球封印」を宣言した。昨年はキャンプで直球とカーブに球種を限定された禁欲生活に勝ち、チーム勝ち頭の13勝を挙げた。今年はさらに直球のみに限定して1カ月間継続。異例の取り組みで直球を磨き、初の開幕投手をつかみ取る。

 武田が不敵な笑みを浮かべた。「変化球はキャンプでは投げません」。佐藤投手コーチから若手投手は7日の第2クール終了まで直球のみの指令が出ている。武田はキャンプの最後まで直球1本勝負で磨きをかけるつもりだ。

 キャンプでは連投でブルペン入り。エース摂津や最年長36歳五十嵐が熱のこもったブルペン投球を行う中、直球のみフォームを確認しながら35球を投げた。「昨日(1日)よりも全然よかった。悪い球は3球くらい。例年、春先は球がバラけるが、体幹を鍛えたのがいいのか、昨年の修正ポイントがいいのか」と、初日の33球よりも内容に満足した。

 武田の代名詞と言えば縦に大きく曲がるカーブ。手先が器用でスライダー、スプリット、ツーシーム、カットボールなど変化球は多彩だ。だが、昨年のキャンプではあえて直球とカーブに球種を限定。紅白戦2試合、5回5失点と打ち込まれたが、150キロを超す直球を磨いたことで、ローテーションの柱に成長。シーズンでチームトップの13勝を挙げた。

 1年前は変化球は2月24日の練習試合から解禁。オープン戦中も本調子になるまで時間がかかったが、さらに自分を縛る。今年はカーブも封印し、直球のみにする。「直球のコントロールがよくなる。昨年との比較もしやすい。直球で(ストライクゾーンに)出し入れできるようになって、抑えると自信にもなる」とその狙いを話した。

 昨年は負けず嫌いの性格から副産物も生まれた。直球でなんとか打たせまいと工夫すると、微妙に直球が変化するムービングファストボールをマスターした。自分に高いハードルを課すのは、開幕投手、そしてチームの柱として日本一3連覇へ導くためだ。「先発なのでキャンプ後半は球数も多くしていく」。5割の力でも7、8割で投げた時のキレを出せるような「脱力フォーム」を開発するためにも、直球限定にこだわる。

 佐藤投手コーチも「変化球はいつでも投げられる。(紅白戦などで)打たれても気にしない」と、結果に左右されないことを明言。独自の世界を突き進む武田に曲がり道は必要ない。【石橋隆雄】

<武田はこだわりの男>

 ◆全力でこそプロ 毎年年末のプロ野球宮崎県人会の野球教室で小学生と1打席対決。12年には軟球で140キロ超え、14年は130キロ超えで空振り三振を奪いプロの厳しさを教えた。

 ◆強い精神力 12年のデビュー当時、AKB48の曲「上からマリコ」にかけ「上から翔太」と打者に対する強気の姿勢を表現。今年の自主トレで開幕投手に立候補した時も「日本シリーズも何も感じなかった」とケロリ。

 ◆走るの大好き 昨年は開幕から100日はほぼ毎日、5キロランニング。試合後にヤフオクドームの外を走ったこともあった。

 ◆異業種交流 ロックバンド「UVERworld(ウーバーワールド)」やヘアメークアーティストなどと交流。今年1月には宮崎でプロゴルファー、Jリーガー、ラグビー選手、競輪選手とトレーニング。

 ◆勉強好き 昨年の契約更改は初めて代理人を伴って交渉。金額に不満はなかったが保留し、内容を細かく学びたいと査定資料を持ち帰り研究した。