中日岩瀬仁紀投手(41)が、544日ぶりにマウンドに帰ってきた。沖縄・北谷キャンプで11日、紅白戦に先発。1回2安打無失点だった。試合登板は14年8月6日の広島戦以来。チーム最年長が疲れのピークを迎えているこの時期に、最初の実戦に投げられたこと自体が大きな収穫。最速134キロを出し、復活ロードを力強く照らす17球だった。

 マウンドを降りた岩瀬が、隣接するブルペンに戻ってきた。バランスを整えるための「おかわり」投球。柔和な表情で腕を振り続けていると、友利投手コーチが「表情がいいね~」と話しかけた。41歳は白い歯を見せて答えた。

 「投げられるって楽しい」

 歴代3位の889試合登板、同最多の402セーブを挙げている百戦錬磨の鉄腕の言葉だ。ちょうど1年前に、同じ北谷のブルペンで左肘痛が再発した。そこから地獄を見た。何カ月経っても状態が上がらず、引退を覚悟した。再び投げられる喜びを今度は同じ場所でかみしめた。

 「久しぶりで制球がどうかと思ったけど、甘い球もあったけど投げられたことが収穫。最初にしてはボチボチ。実戦とブルペンでは力の入り具合も変わる。直球はまあまあよかった。うまくいった部分もいかなかった部分もあった。投げられたのは大きい」

 先頭大島に右前に運ばれたが、盗塁刺、亀沢を右飛。平田は遊撃内野安打。2死一塁から最後は福田を高めの直球を2ボールから遊ゴロに仕留めた。谷繁監督は「走者を出してもホームにかえさない。そういう投球ができるところを見せてくれた。これから球にキレも出てくると思う」と目を細めた。

 新球のシンカー系ボールは1球しか投げられなかったが、直球の最速は134キロまで上がってきた。山井の最速が138キロだったと聞くと「くそ~」と悔しがった。後輩とやりとりできる現実もうれしかった。1月の名球会イベントでも“登板”していたが、もちろん意味合いは別ものだ。

 経験が浅い投手がそろうリリーフ陣。その一角に岩瀬が戻れば、昨年のように終盤の継投で苦しむシーンは減ると期待される。「第1段階です」。階段を軽やかに上がっていく岩瀬の姿は、チームに勇気をもたらしている。【柏原誠】