日本一の外野陣に割って入る! プロ3年目のソフトバンク上林誠知外野手(20)が11日、今キャンプ初のシート打撃に参加。2打席目で中前にライナーで安打を放った。朝のアーリーワークでは工藤監督を相手に打ち込み、その指揮官も成長を認めた若きヒットマン。「1番・中堅手」での開幕スタメン奪取へ、好スタートだ。

 上林にとって、ただのシート打撃ではなかった。「ヒットを打ちたかった」。2年連続日本一チームのレギュラー奪取には、打ち続けることが必要だ。第1打席は二保を相手に右飛だった。この日最後の打席となる2打席目。岩崎の3球目をとらえ、中堅前へライナーで運ぶ安打を放った。

 「まず1本出てよかった。翔さん(岩崎)は速かった。ヒットを打てたのは対応できた証拠」とホッとした表情を見せた。この日最速148キロをマークした岩崎の直球に、1、2球目はファウルで差し込まれた。だが、打席内で修正した。

 成長は著しい。3年目の今季は初のA組でスタート。アーリーワーク、ロングティーで徹底的に振り込む日々。「自分のポイントでしっかり打てるようになりました」と、その成果を実感している。成長を感じ取ったのは、本人だけではない。この日朝のアーリーワークでのこと。打撃投手は工藤監督が務めてくれた。類い希な投球術と分析力で、現役時代に通算224勝を挙げた指揮官が語った。

 工藤監督 内角をうまくさばけるようになっていた。今までは内角低めが(打てる)ツボだった。ツボの上は弱点になりやすいが、そこを打てるようになると投手は外角へ投げるしかなくなる。

 仙台育英3年のセンバツでワンバウンドの球を二塁打にするなど、もともとバットコントロールには定評があった。プロ入り後は、昨年8月にプロ1号で逆転満塁本塁打を放つなどパンチ力も備え始めていた。そして今季は、ミートポイントが拡大しつつある。

 首脳陣は「1番・中堅」でチャンスを与えようと考えている。上林も「開幕スタメン、規定打席で打率3割」と高い目標を持っている。オリックス依田スコアラーは「内野安打が多くなる打ち方とは思わないが、足が速い打者は嫌。二塁打が三塁打になる」と警戒した。

 ソフトバンクの外野争いは、柳田、内川、中村晃、長谷川、福田らがおり激戦区。この日のシート打撃で先輩野手も強い打球を飛ばし、上林は「さすがプロ。みんなすごく打つ」と、レベルの高さを実感。それでも開幕スタメン奪取への思いは揺るがない。今キャンプ初のシート打撃。上林が価値ある一打を放った。【石橋隆雄】

 ◆上林誠知(うえばやし・せいじ)1995年(平7)8月1日、さいたま市生まれ。小1から野球を始める。土合中では浦和シニア、3年春に全国制覇。仙台育英(宮城)では1年秋から4番。2年夏から3季連続甲子園出場。13年ドラフト4位で入団。1年目は内野手に挑戦し、2年目の昨季から本職の外野。右投げ左打ち。185センチ、81キロ。

 ◆ソフトバンク上林の昨季 5月21日オリックス戦(ヤフオクドーム)で代打としてプロ初出場し一飛。5月2試合で2打数無安打だったが、8月に再昇格。8月25日ロッテ戦(ヤフオクドーム)で「9番・右翼」出場すると1打席目にプロ初安打の左安。3打席目に逆転満塁弾でプロ1号を放った。シーズン終盤では「1番・中堅」として4試合出場。初めて1番センターで先発出場した9月30日楽天戦(ヤフオクドーム)では2号アーチを含む3安打で、初の猛打賞をマークした。15試合で44打数14安打(打率3割1分8厘)、6打点、2本塁打だった。なお、ウエスタン・リーグでは首位打者、盗塁王に輝いた。

 ◆ソフトバンクの外野手事情 層は厚く、複数ポジションを守ることができる外野手が多い。左翼の内川は本格的に一塁の練習を開始。DHと合わせ、3つのポジションを状態に応じて使い分ける方針だ。中堅は柳田で不動だが、上林がブレークした場合は右翼に回る可能性がある。右翼の中村晃は一塁の守備も可能。長谷川や福田、吉村らをうまく起用しながら、戦力を維持することになる。