ジャイアンツ復活へ、ミスターが動いて、動いて、動き回った。巨人長嶋茂雄終身名誉監督(79)が13日、春季キャンプを訪問。雨天により木の花ドーム室内での練習となったが、到着直後から選手をチェック。阿部慎之助捕手(36)や岡本和真内野手(19)らに打撃指導をするなど、ほぼノンストップで見守った。今日14日の紅白戦も視察予定。愛弟子・高橋由伸新監督(40)のため、情熱を注入する。

 一直線にグラウンドへ向かった。午前9時51分。長嶋終身名誉監督が、木の花ドームに到着。入り口に陣取るファンからは「ミスター!」の声が飛び、報道陣がどっと群がった。「おはよう。雨降ってるね~」とミスタースマイルを振りまきながら、選手の元へと歩を進めた。

 背筋をピンと張ったまま、右翼付近の円陣に加わった。「さあ行こう~!」。おなじみの甲高い声が、練習開始の合図だった。

 真っ先に阿部の姿を捉えた。S班で独自調整をする阿部の後ろからトス打撃を見つめた。昨年のキャンプは35分間の直接指導で下半身の重要さを説いた。「このチームは慎之助がやらないと」との思いが、ずっとある。阿部が左翼ファウルゾーン付近にあるシートで囲われた“密室”に移動すると、後を追って松井臨時コーチと打撃をチェック。阿部を「ずっと見ていてくれた。捕手に戻るという話もしましたし『また頑張れ』と言っていただいたので頑張ります」と感激させた。

 フリー打撃では岡本に目を奪われた。内田コーチに「逆方向への打球は天性のものがある」と絶賛しつつ「インコースがね、良かったり、悪かったり」。岡本の右手を手に取り、テークバックでバットが背中方向に入りすぎないように助言。岡本は「去年は声を掛けていただいただけ。今年はワンポイント指導をしていただいた」と感謝した。触られた若手は活躍するという「巨人あるある」もゲット。「坂本さんも長野さんも実力があるので活躍されただけ。僕はないので」と謙遜しつつ「期待を裏切らないよう頑張りたい」と力を込めた。

 同郷の千葉・佐倉市出身で3度目の対面となるドラフト2位重信慎之介外野手(22=早大)をはじめ、若手にも積極的に声を掛けた。所狭しと動き、選手の一挙手一投足に目を凝らした。練習後にはテレビ局の企画で高橋監督と対談。「いろんなアドバイスをいただいた」と話す高橋監督に「監督としていいものをもっていますね」と目を細めた。午後4時前、「みんな動きが良かったね。狭いスペースだったけど元気があった」と、うれしそうに帰路についた。今日14日の紅白戦も視察予定。20日に傘寿を迎えるミスターだが、巨人復活への情熱がほとばしっていた。【浜本卓也】