ソフトバンク江川智晃外野手(29)が対外試合の「チーム1号」を放った。24日の韓国・斗山との練習試合に、6番中堅で先発出場。昨年に18勝を挙げた左腕柳煕寛(29)から2回に左翼席に運んだ。外野手争いはレギュラー組に加え、若手の有望株がそろう激戦区だ。04年ドラフト1巡目の長距離砲が生き残りへ必死のアピールを見せた。

 内角を突く直球に、江川のバットは反応した。高く舞い上がった打球は左翼ポール際の芝生席に着弾。16年の対外試合1号は、背水の男から生まれた。

 「うれしいです。詰まって、レフトフライかと思った。風に乗ってくれた。アピールに必死なので、どんな形であれ、良かった」

 続く5回にも左前打を放ち2打数2安打でお役御免。今季実戦は4試合で、10打数4安打と快音を響かせている。

 チーム内競争が激しいのは、投手陣だけではない。外野もハイレベルな激戦区。一塁と兼任する内川に柳田、中村晃、長谷川と実力者がそろう。ここに福田や上林、塚田ら中堅と若手もひしめいている。気を抜けば、B組降格が待つ。「すごい選手ばかりなので、1日1日が勝負。あきらめずにがんばっていけば、いいことが起きると信じている」。この日の1発は格好のアピールになった。相手左腕の柳煕寛は昨年18勝5敗の好成績で、韓国シリーズ制覇に貢献した。「知ってましたよ。三振しなくてよかった」と笑った。

 もともと天性のアーチストタイプだったが、スタイルの転換を決意した。力任せにいくぐらいのフルスイングで、打球をとらえにいく。持ち味であるきれいな放物線とは対照的にラインドライブがかかっても構わない。野手が取りにくい「汚い打球」でヒットの確率を上げることに取り組んだ。藤井打撃コーチは「甘くないボールをうまく押し込んだ。し烈な競争の中で左投手から打ったのは、彼の生きる道だ」と言う。まずは左腕キラーが自らに課せられた役割。自信を深める結果になった。

 昨年オフには、松田のFA宣言に伴い、三塁のグラブを発注した。残留により、主戦場は外野になったが、なりふり構わず、開幕1軍を目指している。「打席の数もそう多くない。1、2回のチャンスを自分のモノにしないと。あそこ(本塁打)で満足するタイプ。しぶとくいけたのは、よかった」。こんな男の存在がV3を狙うチームを盛り上げる。【田口真一郎】