周囲はヒヤヒヤしたかもしれないが、安心してくださいと言わんばかりに、ベテラン右腕はきっぱりと言い切った。「大丈夫だと思います」。広島黒田博樹投手(41)の今季対外試合初登板となった西武戦(マツダスタジアム)。3回1死一、二塁からメヒアの詰まったライナー性の打球が左足内側くるぶしを直撃。球数が50球に近い46球に達していたこともあり、そのまま降板。球団トレーナーに「左足内くるぶしの打撲」と判断され、アイシングを施した。芯で捉えられた打球ではなかったこともあり、軽症の可能性は高い。首脳陣はほっと胸をなで下ろしたことだろう。

 足元に直撃してしまったが、右手を出さなかったことも大きい。「届かなかった。足元過ぎて」と本人は語るが、昨季は2度、投手方向への打球に右手を出して負傷した。昨年まで在籍した前田がドジャースに移籍し、今季はすでに大瀬良を欠く投手陣。右手負傷の最悪のシナリオが避けられたことは何よりだ。

 投球結果は2回2/3で6安打3失点とピリッとしなかったが、こちらも問題ない。この日は「調整」以上に「試験」に重きを置いた。「いつも以上にカットボールとチェンジアップは投げた。石原の考えで配球を組み立ててくれた。試したいことは試すことができた」。3回無死二塁で追い込んだ浅村への5球目はカットボール。膝元の内角、厳しいコースからストライクゾーンに曲がり、見逃し三振。昨年はあまり見られなかった対右打者のフロントドアに、黒田は「ああいう投球ができれば幅が広がる」。足を引きずるそぶりもなし。20年目も視界は良好だ。【前原淳】