阪神陽川尚将内野手(24)がプロ初打席初安打を放った。5回の守備から途中出場すると、迎えた7回1死一塁。中日ジョーダンの内角低めチェンジアップを捉え、ライナーで左前へ運んだ。金本監督が将来の大砲候補として期待する若虎が、ベールを脱いだ。

 「とりあえず必死に食らいついていっただけです」

 今季は1軍キャンプで結果を出すも、オープン戦で打撃不振となり、2軍落ち。腐らず、ウエスタン・リーグで5本塁打、18打点と結果を残し、つかんだ1軍の舞台だった。課題の守備でも6回2死満塁。工藤の三塁線上ボテボテの打球をギリギリで見送り、ファウルにする好判断。3年目の大器は確実に進化を遂げている。

 「これで、同期入団の選手が全員1軍にいけたよ」

 1軍昇格が決まり、背番号55はこう漏らしていた。13年ドラフト組でただ1人、1軍を経験していなかった。2年目の昨季は、同期の岩貞や梅野、山本や岩崎が1軍で次々活躍。その中で自身は左肩亜脱臼でシーズンの大半を棒に振った。今季は横田も1軍でレギュラー入り。取り残されている焦燥感に駆られていた。そんな思いの中で決まった1軍昇格。翌日の朝、父校童(こうどう)さんに1本の電話を入れた。「決まったよ」。普段は家族の前で無愛想だというが、電話越しに少しだけ笑った。

 まだ、1歩目を歩き出したに過ぎない。「明日も結果を求めて頑張ります」。未来の虎を担う逸材がまた1人、新たなスタートを切った。【梶本長之】