阪神能見篤史投手(36)が、今季チーム初完投だ。9回5安打7奪三振での鯉料理。2失点完投で2勝目をマークした。投げるだけでなく、1安打1四球でバットでも貢献。7回にはきっちり送りバントも決め、投打で勝利に貢献した。

 ベテラン左腕が先発投手のお手本だ。能見が104球でチーム今季初の完投を決めた。犠打に加え、今季初安打も放ち、投打で勝利に貢献。充実感ある今季2勝目だ。

 「前回(15日中日戦)が2回で代わっているので何とか長いイニングを投げたいと思っていた。味方がいい感じで得点してくれた。ブルペンで誰もつくってないと言われていたし。フォークがいいところから落ちてくれた」

 雨天中止の影響もあって中8日での登板。「立ち上がりがうまくいってくれた」(香田投手コーチ)という通り、いきなり1番田中に死球を与えたが菊池を併殺に切り、3人で終える好発進。3回は会沢に1発を浴び、9回に新井に適時打を許したが、危なげなく最後まで投げ切った。

 打席でも働いた。2回に四球を選ぶと先頭で迎えた5回には左前打で出塁、高山の2ランを呼んだ。前日23日に岩貞の送りバント失敗など、チームはミスが出て、金本監督が「相変わらず投手のバントができんね」と話すシーンもあったが、7回にはきっちり犠打も決めた。得点した3度のイニングですべて絡む仕事ぶり。「初安打ですね。ゲキ詰まりでした。(犠打も)3つ目。継続していきたい」と笑顔だ。

 この日、球場の関心は広島新井の「2000安打」一色だった。その元同僚に2安打1失点。対戦への意識を聞かれると少し考えて話した。

 「4番打者として立ってるんで点差が違ったら配球も違ってきたとは思いますけど。(記録達成は)別のところでやってもらえたらな、と思います」

 2安打でリーチまでは許す余裕の? 内容に金本監督もニンマリ。「名古屋以外はほとんどいい。2点以内だから。内容は“4勝1敗”だよ」。負ければ勝率5割に逆戻りしていた試合、チーム3カードぶりの勝ち越しに能見の存在は大きかった。【編集委員・高原寿夫】

 ▼能見は通算86勝目となり、井川慶と並んで球団11位となった。左腕に限れば江夏豊159勝、山本和行116勝に次ぎ3位タイ。通算奪三振数は1175となり、井川1174を抜いてチーム単独5位に浮上した(成績はいずれも阪神在籍時のみ)。

 ▼能見が今季チーム完投一番乗り。完投勝利は15年4月26日広島戦(マツダスタジアム)以来、通算17度目。広島戦では7度目で、対戦別最多。マツダスタジアムでは5度目で、甲子園6度に次ぐ多さだ。なお、今季両リーグ通じ、完投投手が出たのは阪神が最も遅かった。