DeNAの看板が帰ってきた。左脇腹痛が回復した梶谷隆幸外野手(27)がヤクルト戦(横浜)で今季1軍初出場。4回に先制適時打を放つと、6回には特大の三塁打を放ち、ロペスの犠飛で中押しのホームを踏んだ。開幕から得点力に悩んできたチームに元気を与え2連敗でストップ。最下位から巻き返す。

 1日、梶谷の携帯が鳴った。「調子はどうだ?」。声の主はラミレス監督だった。「初めてかかってきたんです。(前任の)中畑さんは、よくかかってきた。『今からバット持ってこい!』って。面倒かけるタイプなんで…」。申し訳なかった。同時に「監督からコミュニケーションを取ってくれた」。素直にうれしかった。「大丈夫です。いけます」と伝えた。

 ラミレス監督の就任を転機に、自覚を持つと決めた。茶髪をやめ、どら焼きの大量摂取&ウエートの肉体改造も順調だった。キャンプ中の脇腹痛が誤算だった。「無理やり間に合わせようと…」。開幕1週間前に再発。「テレビを見るのも歯がゆくって」。回り道が情けなかった。もんもんとしながら「体重管理もウエートもできないなら、プロとして終わってる。なえそうな気持ちを奮い立たせた」。初志だけ忘れず、この日を待ちこがれていた。

 総立ちで迎えた満員のハマスタ。「感激した」。深いトップをあらかじめ作り、間髪入れず振り込む相変わらずのフォーム。変わったのは打球だった。

 4回の右前先制打。内角に体幹を回した。球足が速い。驚きは6回。105キロのカーブに「踏ん張れた。つらいスクワットをしてきて良かった」。軽く振った打球が落ちない。中堅フェンス直撃の三塁打で中押しを演出した。「風はフォローだった」と本人。「伸びたように見えた」ラミレス監督。しかしバックスクリーンの旗は完全に逆風。平均8メートルだった。

 風が舞い、揚力の助けがあったか。蓄えたパワーとのギャップか。いずれにしても梶谷は、昨オフから13・5キロも増量して初戦を迎えた。よろいをまとい戦線へ。「明日はホームランを」とラミレス監督。心配りにパワーで応える。DeNAを乗せる。【宮下敬至】