東北ゆかりのスターたちに生い立ちやターニングポイントを聞く「わたしのツクリカタ」。第3弾は、楽天の若き守護神・松井裕樹投手(20)を2週にわたってお届けします。1回目の今回は、野球を始めた小学校時代から中学時代まで、どのような練習をしていたのかを交えて話してくれました。プロになってつけている背番号「1」に関係する意外なエピソードも飛び出しました。

 野球は気付いたらやっていましたね。プロフィルでは、始めたのは小学校2年生の時になってます。オヤジが巨人ファンで、テレビ中継を見ていたら「野球やりたい!」って言い出したらしいんですよ。僕はあんまりよく覚えてないんですけど(笑い)。

 最初は元石川サンダーボルト(横浜市)っていうチームで、二塁手と三塁手をやってました。左利きの二塁手です。かなりレアじゃないですか。小学生の頃って利き腕も関係ないじゃない。それでうまかったら格好良かったんですけど、自分はめちゃくちゃ下手で、初めてもらった背番号は「22」。投手になったのは小学校3年生ですかね。左だからとりあえずやってみろ、みたいな。そこから投手人生が始まりました。

 小学校6年生の時に大きな目標ができました。それはベイスターズジュニアに入ること。5、6年生が対象のプロ12球団の選抜チームみたいなものなんですけど、5年生の時は1次試験は通ってたんですけど、次で落ちた。もう本当に悔しくて、悔しくて。ウチは元旦に今年の目標を家族の前で発表するっていうのがあるんですけど、6年生になる年は「ベイスターズジュニアに絶対に受かる」と宣言しました。

 なので6年生の時は全てをそれに向けてましたね。母親が結構厳しくて、ランニングも一緒に走りましたし、(打撃練習の一環で)シャトル打ちのシャトルも上げてくれました。あとはハッパのかけ方もすごかったですね。小学校の運動会のリレーの選手には死んでもなれって(笑い)。授業中にタイムを計測して、上位2人がなれるんですけど、もう必死。逃したら家に帰れない。おかげで1年から6年生までリレーの選手になれました。母親の愛情ですね(笑い)。

 小学生の時って体力=能力じゃないですか。リレーの足の速さも終盤にバテるかどうかみたいなところもあると思うんです。だからとことん体力を強化しました。よく聞かれるんですけど、当時の練習メニューは腹筋、背筋、素振り、あとはシャドーピッチングですね。本当に基礎的なことしかやっていないんです。それで、6年の時はベイスターズジュニアに選ばれることができた。まぁここまでやったら選ばれるだろうなっていうくらい真剣に練習しましたけど、本当に良かったです。

 中学に入ってからの練習内容も基礎トレですよ。中学では硬式の青葉緑東リトルシニア(神奈川)でプレーしました。ヤクルトの雄平さんとか楽天の榎本さんも出たチームです。今はロッテの2軍投手コーチになった小谷正勝さんに指導を受けましたけど、変わった練習では米びつのなかで米を握って握力を強化。テレビ見ながらギュッと握ってました。あとはダッシュ練習の時はスパイクを必ず履いていました。土をしっかりかむ分、ももの裏が発達したんじゃないですかね。結構驚かれるのが当時の投げ方と高校時代の時の投げ方が変わってないんですよ。ずっとピッチングしたいように、ピッチングしてました。変に直されなかったのが良かったと思います。

 ここまで振り返ってみて、実はエースナンバーって背負ってないんですよ。ベイスターズジュニアの時も背番号1は女の子でしたし、中学の青葉緑東リトルシニアも違った。でも、それが良かったと思います。自分が2番手ということは、エースであるライバル、目指す存在が近くにいるということなんです。それって、本当にありがたいんですよ。こいつを追い抜いてやろうみたいな気持ちが常に持てるんです。闘争心というか、向上心みたいな。練習も真剣に取り組めると思うんです。(続く)

 ◆松井裕樹(まつい・ゆうき)1995年(平7)10月30日、横浜市生まれ。中学3年に所属していた青葉緑東リトルシニアでは全日本選手権で優勝。桐光学園では2年夏の甲子園で10連続を含む1試合22奪三振の記録を樹立。14年に楽天にドラフト1位で入団し、15年から抑え。15年のプレミア12では侍ジャパンにも選出された。174センチ、74キロ。左投げ左打ち。

 ◆シャトル打ち バドミントンの羽根を使った打撃練習。野球のボールと違い飛ばないため狭い場所でも行える。軌道の変化があるため体のタメをつくったり、変化球打ちの練習にもなる。

(5月12日付 日刊スポーツ東北版掲載)

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