“上から巨人”が、下手投げ右腕を完全攻略した。ヤクルト山中に2本塁打を浴びせ、6回で5得点を奪った。他球団は昨季から手を焼くアンダースローに対し、3回5得点でKOした昨年10月の対戦に続く完勝。高橋監督も「いい対策、準備ができていたと思う」と納得していた。

 キーワードは「上から」だった。村田ヘッドコーチは「他球団の対戦映像は高めの空振りが多かった。目線を下げて上からしっかりたたこうと」。実行者は普段は謙虚な「下から男」たちだった。2回、同点に追いつき、なお無死二塁。亀井が内角直球を右翼席最前列に運んだ。「しっかりたたくイメージでいった。(不調だった)気持ちが晴れた」と優しく笑った。

 スイングは上からだったが、素顔は違う。甲子園での阪神戦翌日の12日、始発の新幹線で帰京。「練習するしかない」と、休日返上でジャイアンツ球場で振り込んでいた。決勝2ランにも「本塁打にこだわりはない。二塁打をたくさん打ってチャンスメークしたい。その方が僕らしくていいかな」と謙遜だった。

 「もう1人の下から男」ギャレットは6回2死一塁、山中のスライダーを上からしばいた。7号2ランを含め来日初の3安打に「良い角度でバットを出せた」。打率2割前半も4番起用を貫く首脳陣の期待に応えようと、メジャー時代の好成績だった09、12年の打撃映像をチェックする。自宅、移動中、就寝前。時間があれば動画に目を凝らす。

 試合後、サブマリンとの対戦歴を聞かれ、答えを探し、20秒も考え込んだ。「ごめん、出てこない」と、身長196センチの体をかがめ謝った。亀井も「普段も上から? ボスキャラじゃないので…」と苦笑い。下手投げの難敵を上から攻めて首位固めに貢献したヒーローは、いつもの優しい顔で引き揚げた。【浜本卓也】