会心の一撃だった。DeNA梶谷が打球の行方を追うことなく駆けだした。6回1死、巨人田口の外よりに沈む107キロのカーブを捉えた。「チョー気持ちいいです! 練習の時から感触が良く、いいイメージで打席に入れた。久しぶりに完璧に打てました」と無邪気に喜んだ。先発石田が好投する中、値千金の3号決勝ソロを決めた。

 心のモヤモヤが少し晴れた。前日17日巨人戦から「2番」で起用された。ラミレス監督が就任直後から打線のカギとしていた「梶谷・2番起用」が実行された。だが、その初戦はスタメン野手で唯一、無安打と精彩を欠いた。「打席で全然、タイミングが合わない」と不調の要因は分かっていた。豪快かつ積極的なスイングは当たりが止まれば、淡泊にも見られる。長所と短所のはざまで苦悩した。

 山形から福島に移動した前夜。宿舎の自室で過去の打撃フォームを見返した。「昨日は夜更かししました。2時半ぐらいまでずっと見ていました」と“過去の自分”を重ね合わせフォーム修正をイメージした。この日は、すり足打法に切り替え、バットも普段よりも立ててトップを作った。「大幅に変えたとは思っていないけど、一番はすり足にしたことですね。ボールとのコンタクトがしっかり出来ればいい。今日の感触は今までで一番」と新しい感触を刻んだ。

 左脇腹痛で開幕に間に合わず、5月4日ヤクルト戦から1軍に合流。即日からスタメン出場を続けている。梶谷合流後、チームは13戦9勝3敗1分けで大きく白星が先行する。最大11だった借金も5まで返済。ラミレス監督は「グレートなスイングだった。パワーがあるからできる。信じられない本塁打だった」と看板打者の一振りを絶賛した。「チームの調子もいい。その輪に自分も入っていきたい」と梶谷。ここから混セに持ち込み、一気に主役を奪う。

 ▼DeNAの1-0勝利は今季初めてで、巨人戦では11年7月26日以来、5年ぶりだ。この日の1点は梶谷の本塁打。DeNAとなった12年以降、1-0勝利は9度目だが、そのうち梶谷が決勝打を放ったのが5度。現役の1-0決勝打は森野(中日)の7度が最多で、梶谷の5度は福浦(ロッテ)と並んで2番目に多い。ただし、森野は犠飛が3本、福浦は犠飛と内野ゴロが含まれており、「1-0安打」が5本は現役では梶谷だけ。