ソフトバンクのスーパーサブが、大仕事をやってのけた。1点リードの7回1死二、三塁で、13年目の城所龍磨外野手(30)が代打で登場。2007年8月19日以来となるプロ2本目の1号3ランで試合を決めた。レギュラーではないが、14年には開幕からシーズン終了まで1軍だったことで「キドコロ待機中」のTシャツが販売されたほど。この日から捕手練習も始めた“待機男”が、まさに“営業中”の働きを演じた。

 スタンドの誰もが目を疑った。今宮の先制弾、松田の勝ち越し弾。そして試合を決めたのは伏兵、城所のバットだった。7回1死二、三塁から、福田の代打で打席へ。代走、守備固め専門だった男が、07年8月19日楽天戦以来のプロ2号でダメを押した。

 「まさか誰も僕があそこで出てくるなんて思っていなかったと思う。緊張どころじゃなかったが、出たらやってやろうという気持ちだった。やってもうたと思った」。ベンチ前ではキャプテン内川が、思わず頭を抱えて驚いたほど。中京高の先輩となる松田と「熱男~!」と絶叫し、喜びを爆発させた。これで代打では3打席連続安打。今季10打数5安打と、立派な左の代打の切り札的存在だ。

 起用がスバリ的中した工藤監督も「ベンチでも声が出ているし、代打あるよと言うと顔が初々しい。打撃の状態もいい。ひらめきみたいなもの。気持ちのこもった打席が多い」と、プロ13年目ながら必死な30歳にチャンスを託した理由を明かした。

 守備でも魅せた。9回に1点を返され、なお2死一、二塁のピンチで、田中賢の右翼への打球をスライディングキャッチ。審判団が協議の末、アウトを宣告する微妙な打球で、俊足の城所でなければ追いつけない打球だった。また、この日の練習から、“第3の捕手”として、バント用マシンで捕球練習。守備、走塁のスペシャリストは、あらゆる出番に“待機”していた。

 14年には12打席にもかかわらず、スーパーサブで開幕から1軍に居続けた。昨年は度重なるケガで1軍出場はわずか1試合。今季は上林ら若手が台頭し「自主トレも今年はラストのつもりでやっていた」と意気込んで、81キロから6キロ減量するなど、ケガをしない体へとモデルチェンジした。そんな努力が実を結んだ。お立ち台も06年以来で、誰よりも輝いていた。【福岡吉央】