163キロの興奮を追い風に、札幌ドームを熱狂のるつぼへ昇華させた。日本ハム陽岱鋼外野手(29)が粘った末の一振りで、快勝へのレールを敷いた。

 初回だ。阪神岩崎の136キロ直球をすくい上げた。「打った瞬間、行くかなと思った」という当たりは、自身7度目の先頭打者本塁打。リリースポイントが遅く、球持ちのいい初対戦の左腕に「タイミングが取りづらかった」が、ファウルを重ねて9球目。見事にアジャストして、主導権をグッと引き寄せた。

 最高の準備を心がけ、結果につなげた。前日11日の試合後。城石、金子両打撃コーチに願い出た。「明日のバッティング練習は、なしでお願いします」。チームは今季初の2週連続での6連戦。「自分の体は一番よく分かっていますから」。目に見えない疲労が、たまっていた。7日広島戦で連続試合安打が「13」で止まり、試合前まで2戦連続無安打。首脳陣も積極的休養を認め、この日の試合前練習ではティー打撃のみ。三塁で内野ノックを受けるなど、自ら必要な調整メニューを考えて実行して、きっちり仕事を果たした。

 160キロ台連発で3者連続空振り三振で立ち上がった大谷を、華のある1発でもり立てた。中堅から見守っていても興奮。「すごいです。全部(すごい)です」。3回には左前打、7回も左前打を放って、今季3度目の猛打賞。「ホームランを打った後が大事」と、いい流れを継続。4万超えの大観衆に、大谷に負けじと陽岱鋼が存在感を発揮した。【木下大輔】