広島が史上初のコリジョン(衝突)ルールによるサヨナラ勝ちを決めた。「日本生命セ・パ交流戦」の西武戦で9回2死一、二塁から、赤松の中前適時打で二塁走者菊池が生還。1度はアウトの判定も、約10分間のリプレー検証の末、返球を受けた西武上本捕手が走路をふさいだと判断され、セーフとなった。広島は今季3度目のサヨナラ勝ちで連敗を止めた。

 木内球審のアウト判定に、広島緒方監督がベンチから鬼の表情で「コリジョン、コリジョン!」と言いながら飛び出した。審判団はすぐにリプレー検証に入り、約10分後に判定がセーフに覆ると、サヨナラ打の赤松を中心に歓喜のシャワーが浴びせられた。

 緒方監督 確信はあった。今季はああいうプレーは適用されている。また他のチームでも何度も判定が覆っているのを見ている。

 赤松の中前打で、二塁走者菊池は好スタートを切って三塁を回った。西武秋山のバックホームはやや三塁側にそれてショートバウンド。捕手上本が捕球の際に走路をふさぐ形になった。菊池が左手を出すふりをして右手でベースを触れるより先に上本は菊池にタッチしたが、それよりも捕球の立ち位置でコリジョンルールが適用された。

 春季キャンプ2日目。早朝の散歩で緒方監督は「野球が変わる」と言った。午前中の練習を走塁に割くこともあった。審判にも何度も確認。「是非は語る立場にない。ただ走力のあるうちには有利。武器にしないと」と決意した。河田外野守備走塁コーチは1人1人の「利き足」を確認。タイムと感覚をすり合わせていた。

 約10分間。ベンチで赤松は「これでアウトなら相当持っていないと言われた。キクには『100%、絶対です』と言われていたので、そうなのかなと思っていた」。ルールを味方につけ、連敗を止めた。今季3連敗のない広島。風は確かに吹いている。【池本泰尚】