また「リアル二刀流」が、さく裂した。日本ハム大谷翔平投手(21)が投打にフル稼働し、6連勝で7勝目を挙げた。オリックス戦にDH制を解除して「5番・投手」で先発出場。投げては最速162キロをマークし、7回を3安打無失点、2戦連続2ケタとなる11奪三振と完璧に抑えた。打者では3打数1安打1四球で、決勝の先制点を生む奮闘。「リアル二刀流」で臨んだ5試合の防御率は、実に0・47。チームも4連勝へ導いた。

 投げて、打って、走った。大谷が一人二役で、主役を張った。7回、121球。剛腕でオリックス打線の生気を奪った。最速は自己記録に1キロ及ばない162キロも、160キロの大台を計7球マークした。速球を生かし、毎回の11三振を積み上げた。「早打ちで、どんどんくる印象」。立ち上がりで傾向を察知して、逆手に取る。スライダーとフォークで打ち気をそらす巧みな投球術も駆使し、本職の投手を完遂した。

 もう1つの難役も務め上げた。5番打者。2回1死からディクソンの初球ナックルカーブに反応し、痛烈な三塁強襲安打。1死一、二塁となり、岡の中前打で一気に二塁から先制のホームを陥れた。先頭の6回は四球で出塁。1死一、三塁から大野のセーフティースクイズで生還。貴重な追加点を奪った。投打を「楽しむ余裕はない」という必死さが、フル稼働の生命線。5月29日楽天戦からDH制がない交流戦3試合を含む5戦連続の「リアル二刀流」で全勝と、不敗神話を紡いだ。

 壮大で規格外の挑戦。プロ4年目で力強く響き始めた胎動は、本場にも届いた。今季開幕直後、共通の野球関係者を通じてサプライズなリクエストが届いた。依頼主はメジャーでもトップクラスの外野手、米メッツ中軸のキューバ出身セスペデス。面識のない右の強打者のお願いは「バットを3本、交換してくれないか」というものだった。快諾し、互いの「商売道具」を、やりとりしたという。

 この日は、複数の米球団が視察。ダルビッシュが在籍するレンジャーズは、フロント陣トップクラスのジョシュ・ボイド編成本部長が今季初めて肉眼でチェックした。シビアな目利きたちの前であらためて、世界基準をアピール。栗山監督も「オレなりに感じるモノがあった」という。次回登板予定は7月3日、敵地での首位ソフトバンク戦。大谷が無敵の「リアル二刀流」で、奇跡の反撃への布石を打ちにいく。【高山通史】

 ▼大谷が自身3度目の6連勝。オリックス戦は初対戦の13年8月23日から無傷の7連勝だ。これで6月は4試合に登板して4勝0敗の防御率0・29。月間4勝は15年4月に次いで2度目。パ・リーグの月間防御率ランク(月間30イニング以上)では、大谷の0・29は歴代9位。6月の大谷は2失点(自責点は1)だったが、失点は5日巨人戦の先頭打者本塁打と失策によるもの。今月は31イニングを投げ適時安打を1本も許さなかった。