ショックな敗戦の中でも若虎は、しっかりと爪痕を残した。阪神高山俊外野手(23)がチームの天敵である巨人マイコラスから3安打を放った。これで今季7度目の猛打賞。走塁面でミスはあったが、バットでは完全に復調モード。

 歴代の虎戦士に肩を並べるにふさわしい強烈な打球は、この日3本目の安打となった。7回2死。高山が打席に入った。マウンドにはチームの天敵マイコラス。4球目だ。甘く入ったボールを見逃さない。真ん中145キロ直球を捉え、ライナーで右前に運んだ。

 3打数3安打で今季7度目の猛打賞。球団新人では80年岡田彰布、97年今岡誠に並ぶ偉業を達成だ。しかも相手は、昨年チームが3敗を喫し、防御率1・50と抑え込まれたマイコラス。昨季阪神で、その苦手右腕から3安打を放った選手はおらず、チームとして今季初顔合わせとなった一戦で、ルーキーが存在感を植えつけてみせた。

 6月は月間打率2割1分7厘と落ち込んだが、7月に入り26打数13安打。打率5割をマークしている。試合後は猛打賞に関して「全然納得いく内容じゃないので」と一言。ただ、日大三では灼熱(しゃくねつ)の甲子園で全国制覇も経験した男は、言葉とは裏腹に、夏場に向けてすさまじい勢いで調子を上げている。

 歴史に名を刻んだ夜となったが試合後、高山に笑顔はなかった。「バッティングどうこうよりも、今日は走塁じゃないですか。すいません」。5回。先頭で中前打を放つと、続く北條の初球ですかさずスタートを切った。今季5度目の盗塁成功でチャンスメーク。しかし、次の塁を狙う積極的姿勢が直後に裏目に出た。北條の三塁へのゴロに飛び出し、懸命に帰塁するも二塁タッチアウト。思わず天を仰いだ。猛打賞よりもこのワンプレーを悔やむ。現状に満足することなく成長してきた。失敗を糧に悔しさをバネに背番号9は1歩ずつ階段を上っていく。【梶本長之】

 ▼阪神は巨人マイコラスとの今季初顔合わせとなった試合で敗戦。昨季から6試合対戦し3勝を許し(0敗)防御率1.47。対戦打率は1割6分2厘(148打数24安打)。43イニングの対戦で、本塁打は昨年7月11日(東京ドーム)の福留が打った1本のみ。

 ▼高山がプロ7度目の猛打賞を記録し、阪神の新人としては80年岡田彰布、97年今岡誠と並んだ。球団の新人最多は98年坪井智哉の11度。高山も現状ではシーズン11度のペースで、更新の期待もかかる。なおセ・リーグ新人の猛打賞最多は、58年長嶋茂雄(巨人)の14度。