DeNA筒香嘉智外野手(24)は8月になっても止まらない。1回、阪神能見から左中間スタンドへ33号ソロを放った。特大の勝ち越し2ランを放った梶谷と、2者連続アーチで試合を決めた。筒香は7月を16本塁打と大当たりで突き進み、月が変わっても好調ぶりは続く。これで通算99本目のアーチと、大台にも王手をかけた。チームは再び勝率5割に復帰。初のクライマックスシリーズ(CS)出場へ向け、ハマの主砲が文句なしに打ち続ける。

 筒香がグイッと押し込んだ。2点リードの1回無死。阪神能見の浮いた直球を一撃で仕留めた。ツートンカラーのバットで捉え、左中間席へ運んだ。8月に入って1本目の33号ソロ。「カジさんの流れに乗ることができました」。前打者で看板直撃の2ランをかち上げた梶谷の勢いそのままに主砲も1発攻勢で続いた。7月は日本人では史上最多タイの月間16本塁打&史上最多の月間6度のマルチ(複数)弾でホームランダービー・トップに躍り出た。前月の勢いもそのまま8月につないだ。

 本塁打の量産態勢に周囲はざわつくが、筒香の体に染みついているのは、コンスタントに積み上げるスタイルだ。小学時代に目標達成への基盤が形成された。夏休みは、朝のラジオ体操の後、まず学習机に向かうのが日課だった。「最初に一気にやるとか最後にまとめてやるということはなかった。毎日、決めた分をやるのが決まりだった。その日の分をやらないと、母さんが野球の練習に行かせてくれなかった」。夏休みの宿題は、計画的にコツコツ進めるものだと母親から教えられた。

 宿題の“ご褒美”として与えられた野球でも習慣は変わらなかった。設定したテーマを貫き、長いスパンでレベルアップを図る。本塁打を量産した翌月は、減少傾向に転じる球界の通説とは無縁だ。「本塁打を狙いにいってしまうとフォームは必ず崩れる。チームが勝つためのヒット。1つずつ、1本ずつが大事だと思う」と一過性の爆発力よりも安定感を最も重視して、ここまで歩んできた。

 主砲のバットに導かれるように球団史上初のCS進出が日に日に現実味が増す。王手をかけた100本塁打については「あと1本なんですか? 全く知らなかったし、興味がない数字」。それよりも「地道に粘り強く戦っていくだけ。焦っても何もない。目の前の試合を全力で勝ちにいく。その連続でしかない」と断言した。筒香のペースで力強く前に進む。【為田聡史】

 ▼7月16本塁打の筒香が8月初アーチ。この日は左翼方向に打ったが、方向別の本数を昨年と比較すると、右翼15年21本→16年22本、中堅3本→3本、左翼0本→8本。左翼への1発は昨年0本で通算でも昨年まで3本しかなかったのに、今年は8本と増えている。過去に月間15本以上打った延べ13人の翌月の本数を調べると、翌月も2桁打ったのは81年門田(南海)と01、02年カブレラ(西武)だけ。10本以上減らしたのが8人もいるが、8月の筒香は何本打つか。