意地の一打だった。DeNA筒香嘉智外野手(24)が、延長10回に右前へサヨナラ打を放った。1死一、二塁、広島薮田の甘く入ったフォークを逃さなかった。「なかなか点が取れない中で投手陣が頑張ってくれていた。最後に勝てて良かった」。一塁到達と同時にペットボトルを手にしたナインがベンチから飛び出す。筒香は外野まで必死に逃げる。スタンドは大喜び。球場全体で今季6度目のサヨナラ勝ちを満喫した。

 文句なしのシーズンを突き進む中でも、貪欲な姿勢は忘れない。11日の巨人戦前に相手の打撃練習を凝視した。視線の先には同じ左打者の巨人阿部がいた。自身の中で小さなスランプを感じていた筒香は、目の前の手本から「やっぱり阿部さんのフォームはすごいです。少しヒントをもらった気がします」。左足をベタ足のようにつき、バットのヘッドを走らせることに意識を置いた。そして即日の左翼席への35号で技術のアップデートを確認した。

 この日は中盤まで黒田に3三振を喫した。うち2打席は得点圏だった。「4番を打たせてもらっている自分が打てなかったら流れはこない。なんとか打てて良かった」。延長戦での“背水の一打”は強振せずにバットのヘッドを利かせて一、二塁間を抜いた。主砲の今季3度目のサヨナラ打でチームは2位巨人とは3・5ゲーム差、4位阪神とは4ゲーム差で上位との差を詰めた。「僕たちはCSではなく優勝を狙っている」とお立ち台で宣言。ラミレス監督も「もう下を気にせずに上を見て戦う」と同調。世紀のミラクル大逆転が横浜で実現するかもしれない。【為田聡史】

 ▼筒香が延長10回にサヨナラ安打。DeNAのサヨナラ勝ちは今季6度目だが、そのうち筒香が6月4日ロッテ戦、7月22日巨人戦、8月13日広島戦と3試合でサヨナラ安打をマーク。DeNAでシーズン3本のサヨナラ安打は06年村田以来、10年ぶり。球団記録は94年ローズの4本で、筒香があと1本に迫った。