ヤクルト山田哲人内野手(24)が、また1歩、史上初の2年連続トリプルスリーに迫った。2点リードの6回2死。三塁への内野安打で出塁すると、重心を低く構えた。2球続いたけん制に、呼吸を整えた。阪神松田の投球モーションを見つめ、バレンティンへの初球で仕掛けた。両腕を目いっぱい振り、余裕のタイミングで二塁を陥れた。前の打席でも二盗をマークしており、今季盗塁数を「29」。「貪欲に行こうと思っていた」と、大台に王手をかけた。

 目標に掲げる2年連続のトリプルスリー(3割、30本、30盗塁)に向けて、すでに本塁打は33本。打率も3割3分2厘と、安定して高い数字を誇る。残るは1つ。「盗塁って、しんどい。リード、帰塁。これだけ走ったら研究されますし。でも今は打率や本塁打とかよりも、30盗塁まで残りちょっとなので」。そう考えて走り続けてきた。

 故障は完治していない。それでも、考え方は変わらなかった。10日に左第8肋骨(ろっこつ)骨挫傷のためプロ入り後、初めて故障で出場選手登録を抹消された。その前日9日の中日戦(ナゴヤドーム)の試合前練習時に「背中がピキッって音がした」。今月24日に1軍復帰した際、「また背中がピキッってなるかな」という不安を抱えていた。同時に「もう痛いとも言っていられない」と覚悟を決めていた。山田は走り続ける。「30盗塁を達成しても、31個目も狙いたい」。前人未到の領域の、その先を見据える。【栗田尚樹】