阪神狩野は熟練の1発を決めた。4点ビハインドの8回、先頭で代打登場。スイスイ好投を続けていた左腕石川の初球、内寄りスライダーを「ある程度」狙い澄まして振り抜いた。虎の意地が詰まった飛球は中堅バックスクリーン左に着弾。「準備はしっかりできていたと思います」。敗色濃厚のムードの中、自身7月20日巨人戦以来の1発となる3号ソロを放った。

 勝負強さに磨きがかかり、今季はスタメンに代打の切り札に、チームになくてはならない存在。ただ、夏場はしばしの間、快音から遠ざかっていた。先発した8月9日広島戦で猛打賞をマークした後は、7試合10打数連続ノーヒット。それでも鍛錬を積み続けるから結果が戻ってくる。この日も全体練習前、汗だくで室内練習場を後にする姿があった。

 「出たところでしっかり頑張るだけです」。CS圏内を争うヤクルトに2連敗し、5位に転落した。人一倍フォア・ザ・チーム精神にたけた33歳が多くを語れるわけがない。3位DeNAとのゲーム差は2・5に広がった。もう残り22試合しかない。正念場だからこそ、中堅組の底力に期待したくなる。【佐井陽介】