ロッテが連敗を5で止めた。2点を追う8回、アルフレド・デスパイネ外野手(30)の激走内野安打などで一挙5点を奪い、逆転に成功した。前日までの10試合で1勝9敗と大失速。4位楽天がじわじわと近づいてきていた。全員全力のプレースタイルで勝利をつかんだ。

 井口の打球がソフトバンク左翼中村晃のグラブに収まると、デスパイネは猛然とスタートを切った。公称95キロの巨体を揺らし、駆け抜ける。勝ち越しホームを踏んだ。ベンチに戻ると「めまいがする」と交代。わずか数分前は、グラウンドに倒れ込んでいた。

 2点を追う8回1死一、二塁だった。スアレスのスライダーを引っ張った。三遊間で遊撃今宮に捕られた。「全力で走った」と諦めない。一塁送球が右翼方向へそれた。捕球に行った内川と激しくぶつかった。「頭を打って、起き上がれなかった」。両者倒れる間、二塁から細谷が生還。数分後、デスパイネは起き上がり、戦闘モードに戻った。

 その姿に、ネクストの鈴木は「チームのために全力疾走。伝わってきた」と身震いした。代わった森福の初球、狙ったスライダーを振り抜く。右前へ同点打。一塁で何度も拳を握った。「みんな勝ちたいんです」と熱っぽく言った。抱え込んだものがあった。前カードは日本ハムに3連敗。逆転優勝の望みが一気に遠のき、苦しげに口を開いた。「まだ諦めたくない。でも、こういう試合をすると、ファンの人には諦めていると映ってしまう。言い方は悪いけど僕の成績なんてどうでもいい。勝ちたい」。

 翌日、福岡に入ると、キャプテンとして選手を集めた。ブルペンに車座になり語りあった。結論は「やるのは僕ら。(好調だった)シーズン最初のように、雰囲気を楽しもう」。思いを同点打で示し、井口の勝ち越し犠飛につないだ。

 伊東監督もまた、奮い立っていた。この日の試合前、選手を集めた。「シーズンには良い時も悪い時もある。みんなで乗り越えよう」。8回の攻撃がしみた。「決して状態は良くないが、久々に良い集中力が出た」。残り24試合。1勝を積み重ねる。【古川真弥】