ヤクルト山田哲人内野手(24)が6日、DeNA19回戦(横浜)の初回2死から、今季30個目の盗塁を決めた。昨季に続いてトリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁)の条件を現時点で満たした。山田を含め、過去10人が記録しているが、2年連続となればプロ野球史上初の快挙。試合には敗れたものの、9回には意地の34号ソロをマーク。前人未到の領域が目前と迫った。

 ほんの数秒。塁上で、勝負は決まった。一塁走者の山田は、DeNA先発・井納の動きが目についた。「ホームベースの方向に向いている感じ」。けん制はない、と踏んだ。両手を両膝につけ、二塁方向・右足側に重心を置いた。次打者・バレンティンの初球。低重心のままスタートを切り、右足で二塁にスライディング。余裕のタイミングで、今季30個目の盗塁を成功させた。

 少しの足踏みを経た。8月26日阪神戦(甲子園)で1試合2個の盗塁を記録してから遠ざかった。8月には左第8肋骨(ろっこつ)骨挫傷で、プロ入り後、初の故障による登録抹消。以前から痛める腰、右大腿(だいたい)裏の状態も芳しくない。相手からの執拗(しつよう)なマーク。その中で「いつでも行く気はあるのに、バレンティンが打っちゃうから」と、ジョークを口にするほど、心の余裕は持ち続けた。9回には8月7日阪神戦(神宮)以来の34号ソロ。「打」「走」で妥協することはなかった。

 「リード、帰塁、偽走。盗塁ってしんどい」と言いながら、なぜ走り続けられたのか-。

 「誰かと同じでは、本当の一流とは言えない」

 この言葉を胸に刻んでいた。今季の目標に「2年連続トリプルスリー達成」を設定。今春キャンプでは、「誰もやったことのないことを自分がやりたい。ゴールデングラブ賞も取りたい」と力強く言い切った。きっかけは、三木ヘッドコーチの言葉だった。

 三木コーチ 打って走れる選手は、たくさんいる。打って、走って、守れる選手はそうそういない。その先を目指そう。誰タイプでもない、山田哲人を。

 前人未到の領域を追い求めていた。山田は「盗塁だって、守備だって考えることが多すぎて、正直しんどい。でもそれを出来た方がかっこいいでしょ」。本塁打部門に続き、盗塁部門もクリア。残すは打率3割キープだけとなった。「もっとホッとするのかな、と思ったけどそうでもないですね。まだ試合はあるし、これからも走り続けたい」。唯一無二の存在になるべく、歩みを止めない。【栗田尚樹】

 ▼山田が30盗塁をマーク。昨年に続くトリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁以上)を確実にした。トリプルスリーは過去10人が記録し、1人で2度達成すれば史上初。30本塁打&30盗塁だけでも難しく、複数回達成は簑田浩二、秋山幸二に次ぎ3人目。山田の盗塁成功率は9割3分8厘(成功30、失敗2)となり、セ・リーグの30盗塁以上で最高の54年田宮謙次郎(阪神=9割3分8厘)を更新する可能性も出てきた。

 ▼山田は今季422打数137安打で打率3割2分5厘。規定打席(443)に到達しており、このまま欠場してもトリプル3は達成。今後は35打数連続無安打が続いても、打率3割は維持可能。残り15試合に出場を続け、1試合で4打数と仮定すると、8安打放てば3割以上となる。

 ◆大リーグのトリプルスリー これまで22人いるが、複数回は3人だけ。V・ゲレロ(エクスポズ、01~02年)とR・ブラウン(ブルワーズ、11~12年)がいずれも2年連続で到達。最多はBa・ボンズ(現マーリンズ打撃コーチ)の3度で、パイレーツ(90、92年)とジャイアンツ(96年)で達成している。