燃えて奮い立つはずの本拠地で阪神金本監督が仏頂面を崩さなかった。「伝統の一戦」の看板がすたる自滅の敗戦。ミスのオンパレードで、みすみす4点を献上した。甲子園での巨人戦に7敗1分けの惨状に、金本監督も首をかしげ自嘲気味に振り返るしかなかった。

 「何でやろね、ホンマ。今日みたいに3点もどうぞとプレゼントしていたら勝てるわけない。『ミスした方が負け』と、よく言うけど、その通り」

 4回に藤浪が投手の菅野に適時打を浴び、5回には二塁上本がミスを連発した。先頭阿部のゴロに難なく追いつきながら逆シングルでの捕球に失敗して内野安打にし、1死一、三塁で再びクルーズのゴロが正面へ。併殺コースで二塁に送球するが、カバーする北條のグラブをかすめて外野を転々…。痛恨の失策で1点を与えた。

 上本は8月28日のヤクルト戦でも三塁守備で捕球ミスの2失策を犯していたが、この日も2安打がかすむボーンヘッド。久慈コーチも「何十回も彼のあんなプレーを見てきた」と吐き捨てるように言った。敗戦から約50分後、ベンチを最後に引き揚げる選手会長は悔しさを隠せず無言のまま姿を消した。

 1点差に迫っていた9回も中堅柴田が中前打の捕球をミスし、一塁走者の三塁進塁を許した。2死から原口の捕逸で致命的な4点目を失う。高代ヘッドコーチも「かなわんな…。やらんでいい点…」と渋い表情だった。5年連続の巨人戦負け越し。シーズン70敗に達し、3位DeNAとは5ゲーム差に拡大した。シーズン佳境の9月上旬なのに、左翼席はまさかの空席だらけで、秋風が吹いていた。【酒井俊作】

 ▼阪神は甲子園での巨人戦で、今季初戦から8戦未勝利(7敗1分け)。87年、91年の7試合(いずれも7連敗)を超え、球団ワーストを更新。

 ▼阪神は、15年に続き2年連続21度目のシーズン70敗。今季128試合目で、これは01年の119試合目以来のスピード到達。これで88年村山実監督以来、阪神の新監督は10代続けて年間70敗を喫した。