「ハマの主砲」が歴史の扉をこじ開けた。DeNA筒香嘉智外野手(24)が“CS決定打”で球団史上初のクライマックスシリーズ(CS)進出へ導いた。1点差に迫られた6回2死二塁、広島薮田の直球を強引にはじき返す右前適時打。CSは07年に創設されて10年目で、これまでDeNAだけが出場していなかった。昨年から「4番&主将」としてチームをけん引してきた大黒柱が、最下位からCSへと導いた。10月8日開幕のCSファーストステージで巨人と対戦する。

 華麗でもなければ、クールでもない。少々、武骨ぐらいがちょうどいい。本当の自分と素直に向き合ってきた筒香がCS切符をつかみ取った。「今日はCSが決まった。ただ、それだけ。何も変えることなく開幕から1戦1戦、みんなで戦ってきた。1人でここまでこれたわけじゃない。チームの支えがあってこそ。ここからも全力で出来ることをやる。それだけです」。表情を崩すことなく言った。

 打席でも同じだった。1点差に迫られた6回。無死一塁の好機をつくるもエリアンがバントエンドランのサインを見落とし、1死一塁と好機が広がらない。ロペスが捕ゴロに倒れて2死二塁。得点圏ながら不穏な空気が漂った。筒香は「試合の流れは打席に入る前に感じている。打席では『ただボールを打つこと』だけに集中した」。広島2番手、薮田の151キロ直球をひっぱたき、強烈な打球を右前に打ち返した。流れを引き戻す一打で、貴重な追加点を挙げた。

 プロ入りから7年目。チームは毎年Bクラスに沈み続けてきた。自身も、チームの主軸に成長したのは昨季から。もがき苦しむ中で本当の自分を見つけるきっかけがあった。14年11月、侍ジャパンとして出場した日米野球だった。広島菊池の言葉が心に突き刺さった。「自分が下手くそだと認めないと一生、成長はない」。何げない会話の中での一言で、はっと気付かされた。「意識はしていなかったけど、今思えば勘違いしていたのかもしれない。それが成長の妨げになっていた」と大事に心に留めている。

 主将としてチームを束ねる方法論にも直結する。開幕前、ベテラン三浦に頭を下げた。「遠慮なくやらせてもらいます」。親子ほど年が離れる大先輩に言った。負けが込んだ序盤戦は「下を向かずに明るくやろう」とナインを励ました。CS争いが佳境に入る9月は「ちびってもしょうがない。失うものはないんだから、俺たちらしく、びびらずに戦おう」と強い口調で一喝した。

 自分が出来る限りのことを全てつぎ込んで、突き進んできた。だから、まだ達成感はない。「優勝を目指してやってきて届かなかった。絶対にやり返したい」。本当の達成感はもっと、もっと先にある。【為田聡史】