日本ハム増井浩俊投手(32)が、自身6連勝でマジック減らしに成功した。持ち味の150キロ台の直球が定まらず、今季ワースト5四球も粘投。要所を締め6回2安打無失点、8奪三振で9勝目を挙げた。敗れれば首位陥落の可能性もあった重圧の中、優勝マジックを5とした。

 使命感で固まった心を、丁寧な投球で解きほぐし、勝利へ結んだ。増井は6回0封も、再三のピンチを背負った。敗れればマジック消滅の危機もあった。「雰囲気を感じてしまって、いつも通りいかなかった」と、今季ワースト5四球。それでも得点だけは許さず、仲間につないだ。9回、三塁側ベンチ最前列で勝利を祈った。宮西の力投を見届け、笑顔でハイタッチの列に加わった。

 マウンドに立つ前から、勝負は始まっていた。前日23日楽天戦でチームは敗れ、登板前に緊張感が走った。「負けられない意識。(武田)勝さんのためにも…、と思い力が入ってしまった」。投手陣を支えてきた先輩が23日に現役引退を表明。優勝して送り出すためにも歯を食いしばり、踏ん張った。8月18日オリックス戦から自身6連勝で、マジックを1つ減らす原動力となった。

 最高のオフへ、モチベーションが高まる存在が芽生えた。12月21日に第3子となる、長女が誕生予定。4歳の長男、2歳の次男に続き、待望の娘が舞い降りようとしている。育児に積極的に参加する「イクメン」として評判。「オフが本当に楽しみ。気が早いかもしれないけど(大谷)翔平みたいな旦那さんをもらえたらいい」と笑みをこぼすほど、幸せな青写真を描いている。新たに増える家族のためにも、歓喜のフィナーレを目指す。

 105球の熱投に、栗山監督は「この試合の意味をわかっている球数の多さ。気持ちを感じた」とたたえた。救援で不安定だった右腕が、8月に先発に転向し、ローテーションの主軸となっている。劇的な再生に「(シーズン)前半に苦しんだ分、後半に生かせている」。激動の1年は逆転のリーグVで締める。【田中彩友美】