日本ハム栗山英樹監督(55)が、大胆かつ細心な采配で、大逆転劇を完結させる。オリックス戦に勝ち、就任1年目の12年に続くリーグ優勝へ、マジックを1とした。就任1年目以来2度目のリーグ制覇をかける今日27日西武戦(西武プリンスドーム)の先発には、守護神も任されてきた吉川を再び先発に戻しての起用。チーム勝ち頭となる11勝を挙げている有原を、リリーフとして待機させる。

 心はどこかへ、もう舞っていった。ソフトバンクの敗戦を確認。優勝マジックが1になった直後、会見場へ姿を現した。栗山監督は気丈に言葉をつないだが、遮った。「答える(思考の)整理がないんだ」。

 知力を尽くした継投。6回には本塁でのクロスプレーでセーフの判定に抗議。リプレー検証でアウトに覆し、ピンチを救った。全精力を注ぎ込み、抜け殻になった。

 感性を磨き、心身を清めた決戦だった。優勝マジック3をともした前夜。札幌ドームから生活拠点を置く栗山町へ帰宅し、パワースポットへ足を延ばした。ちょうど例大祭が開催されていた栗山天満宮へ。みこしで御霊(みたま)を本殿へと戻す、クライマックスの神聖な儀式。毎年、元日に必勝祈願している、ゆかりある場所だが例大祭は縁がなく、初めて立ち会えた。

 栗山監督 御霊を見ると災いが起きるっていわれていてさ。だから、みんな頭を下げて、見ないようにして。オレもそうしたよ。そういうこと(信心)があるから、みんな優しいんだろうね。

 北海道内の最後の秋祭りといわれ、多くの人でにぎわう中へと身を潜めた。身分を隠していたが、時の人。すぐに気付かれた。「マジック3ですね」、「あと一息、頑張って優勝してくださいね」。北海道の人々の思いを背負って、大阪へ乗り込んだ。着実にマジックを2つ減らした。

 残り3試合。集大成へ、大仕掛けも施した。先発でチームトップ11勝の有原を中継ぎへと配置転換。優勝決定まで「スーパー・リリーフ」として配備する勝負手を選択した。今日の西武戦は、先発に吉川を投入。代役守護神として直近7試合は中継ぎ登板してきたが急きょ、抜てきを決めた。 研ぎ澄ませた直感を頼りに、有終のゴールへ向かう。「オレ、間違っていると思うんだよね。でも、選手を信じてる」。そう笑い飛ばすが、妙手を連発してチームを奮い立たせてきた。「選手を喜ばせたい」。確信を秘め、頂点を極めにいく。【高山通史】