さらば、ハマの番長-。今季限りでの現役引退を表明しているDeNA三浦大輔投手(42)が、本拠地・横浜スタジアムで通算535試合目のマウンドに立った。7回1死、超満員の「三浦コール」に包まれながら悔しい交代。被安打12、自己ワーストの10失点で3敗目を喫し、24年連続勝利のプロ野球新記録樹立はならなかった。現役最年長、横浜一筋25年の大ベテランが現役生活から“降板”した。

 燃え尽きた。球界最年長の42歳。実働25年のハマの番長の目が真っ赤に充血した。顔がゆがんだ。涙がほおをつたった。「高城から直球勝負でいきましょうと言われて、よっしゃ! と。最後の1球。ぐっときた。(涙を)こらえるので精いっぱいだった」。7回。先頭のヤクルト雄平を最後は137キロ内角直球で通算2481個目の三振を空振りで奪った。終わった。張り詰めた空気が和らぎ力がスッと抜けた。

 感謝と悔しさに目が潤んだ。真剣勝負。ベテランに優しいマウンドなど存在しない。2ケタ10失点を喫してもファンは何度でも大歓声でマウンドに迎えてくれた。6回1/3・12安打10失点、8奪三振。味方の援護6点も前人未到の24年連続勝利には届かなかった。現役最後の降板を告げられ、ベンチに腰掛け、自前のタオルで顔面を覆った。「味方が打ってくれて、守ってくれた。最高の舞台を用意してくれた。悔しい気持ちもあるし、申し訳なかった」。マウンドに上がれない寂しさと同じぐらいチームを勝たせられなかったことが悔しかった。

 衰えは己の中だけに封じ込めた。2月の宜野湾キャンプ中盤だった。恒例の早朝散歩を取りやめ、午前の練習を回避。「大したことはない。少し疲れが出ただけ」と話す三浦のほおはこけ、血色もさえなかった。情報管理を徹底し、極秘で点滴治療を3日連続で受けていた。食事ものどを通らない状況だったが翌日からはブルペン投球を再開。「どこも悪いところはない。いつもと変わらない」と投手は投げてナンボだと体現した。

 年上、年下の垣根なく慕われた。先輩を敬い、後輩を尊重する。優しくて強い番長は愛され続けてきた。「この日のために球団、街全体でいろいろなことをしてもらってありがたい。感謝の気持ちでいっぱいです」。街中には“永遠番長”と記された垂れ幕やポスターが掲げられた。横浜の街全体が現役生活をねぎらった。試合後の引退セレモニーでは、仲間の手で背番号と同じ18回、舞った。「三浦大輔は最高の現役人生だった」。現役引退は終着点であり門出でもある。ハマの番長の第2章が幕開けした。【為田聡史】

 ▼三浦が6回1/3で10失点。1試合10失点は04年4月21日巨人戦、07年8月3日中日戦の9失点を超える自己ワースト。先発は球団最多を更新する488試合目。並んでいた梶本(阪急)を抜いて、プロ野球単独7位に浮上した。02年からの連続先発は294試合で史上2位。今季3敗目で通算184敗目は12位。球団では2位(1位は平松196敗)。ちなみに通算172勝はプロ野球40位で、球団では平松201勝、秋山193勝に次ぐ3位。12安打を許すも、8奪三振。通算3146被安打、通算2481三振はともに自らの球団記録を更新した。