DeNAが巨人との死闘を制した。序盤から両軍の内角攻めが激しく、緊張感が充満する展開。巨人村田の本塁打で追いつかれた6回1死から、若いブルペンが動じず、勝負の姿勢を貫いて攻撃をしのいだ。延長11回、伏兵嶺井博希捕手(25)の左越えへの勝ち越し打で盟主を競り落とした。一丸で広島へ乗り込む。

 あどけなさの残る切れ長の目で、球界の看板をにらみつけた。育成上がりの21歳、DeNAの2番手砂田が託されたのは、村田のソロで追いつかれた直後。6回1死の阿部だった。初球。「抜けたボール球でもいい。思い切って腕を振った」。ためらいなく、内角高めに放り込んだ。1回に梶谷が死球で交代。4回には、先発石田が村田にぶつけていた。内角の攻防が焦点の死闘。投げにくい空気などお構いなしで押した。

 3ボールでも引かない。フルカウントから、阿部の背中から入ってくるスライダーを、また内角に収めた。内角打ちの鬼が一瞬、身構えた。「見たことがない反応だった」。見逃し三振で叫び、悠々と2イニングをまたいでいった。継いだサイドハンドの三上も逃げない。前日打たれた坂本に「今日は上から投げた」。インハイの149キロ。詰まらせた遊ゴロでつぶした。

 若きDeNAの面々が、局面で猛者を上回っていく。相手のジョーカーを封じたのも、ブルペンが誇るくせ者だった。9回無死一塁。4番手の田中が、代走鈴木をけん制で殺した。「プロに入って初めて刺しました。できるだけ速いけん制を練習し、ボールを長く持ってじらして、タイミングを変えた」。巨人の強さを長年象徴してきた足を入念な準備で上回り、揺れる流れを1球で引き寄せた。

 準備という視点から見れば、嶺井の決勝打も決して偶然ではない。「ほとんどファームにいて貢献していない。何とかつなごうと」と謙遜したが、初球のけれん味ない強振にも、実にしたたかな裏打ちがあった。

 ラミレス監督は試合前「早い段階から代打の可能性がある。準備を」と伝えていた。嶺井の思い切りに着目。CS前の練習試合では主にDHに据え、7打席も与えてフルスイングさせ、持ち駒として隠し持っていた。しかも11回を締めくくった山崎康は、亜大でバッテリーを組んだ後輩。シーズン終盤で安定を欠いたクローザーへの対処も完璧だった。堂々とファイナルへ進む。【宮下敬至】

 ▼嶺井が延長11回に勝ち越し打。レギュラーシーズンは今季通算15打数5安打3打点で、同点、勝ち越し、逆転、サヨナラなどの殊勲安打はなし。レギュラーシーズンに殊勲安打0ながら、プレーオフ、CSで勝利打点を挙げた選手は12年寺内(巨人)以来5人目で、延長では04年犬伏(西武)以来2人目。ステージ突破を決めたV打は、犬伏、寺内に次いで3人目だ。途中出場した捕手の勝利打点は、嶺井が初めて。