球団初の快挙だ。広島野村祐輔投手(27)が、抜群の制球力でDeNAを6回3安打無失点に封じた。レギュラーシーズンでは3試合投げセ球団で唯一勝利がなく、対戦防御率も7・41だったが、第1戦完封のジョンソンがつくった流れに乗った。救援陣も無失点でつなぎ、ポストシーズンの2試合連続完封は球団史上初。投打が“カミ”あっている。

 踏み出す左足は力強く、投じたボールは続々と捕手石原のミットに吸い込まれた。野村は“ぶっつけ”の94球に意地を込めた。「言い訳にしたくなかったし、だからこそ。今日はもう、どうしてもいい投球をしたかった」。6日の社会人との練習試合で、打球を首の右側に受けて降板。満足とはいえない調整の中でも、白星をつかみとった。

 万全でなくても野村は強かった。「ローテを抜けなかったこと」。16勝でつかんだ最多勝、獲得した最高勝率のタイトルより、それが今季のプライドだった。ピンチはあったが意地だった。6月9日日本ハム戦で腰に打球を受けた後、中6日で16日西武戦に投げ6回無失点で勝利。さらに7月前後には、トレーナーに登板を飛ばすことさえも提案された腰痛があった。球宴前後は「移動がしんどい」ともらしたこともあったが、マウンドに立ち続けた。

 プライドの見せどころだった登板は原点回帰。「最悪5回まででもいい」と初回から飛ばし、生命線のコントロールで圧倒した。右打者の内角、左打者の外角にスライダー、チェンジアップ、シュートが決まった。ボール1個分の出し入れで、DeNA打線を惑わせた。「全体的によかった。狙ったところに投げられた」。ロペス、筒香、梶谷のクリーンアップを計1安打に抑え、打線を分断した。

 完封のジョンソンの流れに乗って6回無失点。中継ぎ陣も無失点でつなぎ、DeNAのスコアボードは初戦から18イニング連続で「0」が並ぶ。「またチーム一丸となって戦っていきたい」と野村。今日14日には「本当に多くのことを学ばせてもらっている」と感謝する黒田がマウンドに上がる予定。思い返せば、9月10日のリーグ優勝も先発は黒田だった。さあ、舞台は整った。【池本泰尚】

 ▼広島が第1戦に続いて完封勝ちで日本シリーズ出場へ王手をかけた。プレーオフ、CSの2試合連続完封勝ちは10年ファイナルS第1戦、第2戦中日、15年ファイナルS第2戦、第3戦ヤクルト戦に次いで3度目。広島は日本シリーズを含め、ポストシーズンでは球団史上初の2試合連続完封勝ちだ。シリーズ出場をかけたプレーオフ、CSで無傷の王手は15度目だが、「無失点王手」は10年中日以来2度目になる。プレーオフ、CSでは14年阪神がステージをまたいで27イニング連続無失点を記録したが、同一ステージの連続無失点は10年ファイナルS中日の22イニングが最長。広島の無失点はどこまで続くか。