32年ぶりの日本一へ、鯉が「大谷対策」に乗り出した。広島が17日、日本シリーズに向けて全体練習を再開。前日16日にプロ野球最速を更新する165キロを出した日本ハム大谷対策として、驚速マシンが登場した。これまで巨人菅野、DeNA井納仕様だったマシンとの距離を1メートル縮めて“パワーアップ”を図ったもの。体感速度は180キロ!? 本拠地マツダスタジアムで22日に開幕する日本シリーズへの秘策を繰り出した。

 165キロの衝撃は、広島にも届いている。日本シリーズ出場決定後、初の全体練習。相手は日本ハムに決まり、話題は大谷に集中した。新井は「テレビで見ていたけど、すごい。想像つかないけど、楽しみ」と驚き、クライマックスシリーズ(CS)で打率8割3分3厘と「神ってた」田中は「打てるわけがない。それくらいの気持ちで臨みたい」と引き締めた。倒すべき敵が大きいほど燃える。そして、しっかりと秘策も練られていた。

 全体練習で一塁側ファウルゾーンにピッチングマシンが置かれるのは、いつもの光景。だが、打者との距離が通常のバント練習時よりも、1メートル手前に設定された。先月20日からCS対策として巨人菅野、DeNA井納を想定して球速設定を最速にし、約20センチの台に乗せて角度を付けていた。この日はさらに1メートル近づけ、ホームベースからの距離は約10メートル。打席に立った迎打撃コーチ補佐は「体感は180キロ」とニヤリ。驚愕(きょうがく)の数字の真偽は別にして、速球対策に乗り出したことは明らかだった。

 提案者の石井打撃コーチは「やらないよりはやっておいた方がいい。大谷くんだけを過剰に意識はしない。パワーピッチャーが多いので入り方は一緒」と説明した。選手は“仮想大谷君”を相手にバントやタイミングを合わせた素振りを繰り返した。丸が「『顔で追うのではなく、目で追ってくれ』と(石井)琢朗さんから言われた」と語ったように、速球に目を慣らすことに狙いがあるようだ。

 同学年の怪物との対戦に気持ちを高ぶらせるのは鈴木だ。「負けたくないと思ってやってきた。最高の舞台で対戦できるので楽しみ。思い切ってスイングしたい」。CSで12打数1安打に終わった。前日16日の休養日は「ボールも、ユニホームも見たくなかった。CS4試合を忘れさせてくれました」と心身ともにリフレッシュ。165キロの映像もまだ見ていない。苦い経験は日本シリーズで晴らすしかない。緒方監督は「1人ではなく、全員をマークしないといけない」と話すが、チームには自然と打倒大谷への熱が帯びている。【前原淳】

<主な速球対策>

 ◆対大谷 ヤクルトは14年、大谷の速球対策で打撃マシンの速度を通常より15キロ速く、145キロに設定。真中打撃コーチ(現監督)は「マシンだと10キロぐらい速く感じる」と155キロ程度への対策だった。

 ◆逆に マシンを近づけた広島とは逆に、14年のオリックスは大谷対策として打者がケージからはみ出るほど打撃投手に近づいて練習した。

 ◆速読 松中(ソフトバンク)は11年の自主トレに「スポーツのための速読ビジョントレーニング」という本を持ち込む。速読で動体視力を鍛えた。

 ◆バット 秋山(西武)は91年、野茂(近鉄)対策として「コンパクトに振れるし、打つポイントを近くにできる」と0・5インチ(約1・3センチ)短いバットを使用した。

 ◆対千賀 ロッテはCSファーストSで千賀(ソフトバンク)対策として打撃投手を近づけて練習。だが、7回4安打で12三振と空回りした。