プレーバック日刊スポーツ! 過去の10月28日付紙面を振り返ります。2010年の野球面(大阪版)は「阪神OB会総会で田淵氏に代わり、代打川藤氏が新OB会長に就任」でした。

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 代打、川藤! 阪神のOB会総会が27日、大阪市内のホテルで開かれ、楽天ヘッドコーチに就いた田淵幸一氏(64)に代わって川藤幸三氏(61)が新OB会長に就任した。「代打の切り札」として活躍し阪神一筋19年。奔放なもの言いでお茶の間の人気を博した元気印が、球団とOBのパイプ役となる。

 出だしから“川藤節”がさく裂した。OB総会後の懇親会。田淵前会長から新会長就任あいさつを求められ、独特のトーンで「オイ、オイ」と威勢良く返事しながら、胸を張るようにゆっくり登壇した。

 川藤 急に何でワシやねん!という大役を仰せつかって、私自身、ビックリしています。ワシはタイガースのおかげでここまでやってこられた。ワシらはタイガースのおかげで、ここまでやってこられたということを肝に銘じて、一生懸命やらせてもらいます。

 田淵前会長は「もう『ワシ』じゃなくて『私』でお願いしますよ」とマイクを渡したが、いきなり禁を破る「ワシ」入り…。懇親会が始まる直前には「こんなんなるんやったら、もっとちゃんとした格好で来ればよかった」とノーネクタイ姿に苦笑いした。

 ネクタイを用意してこなかったように、本人も予想外の抜てきだった。まるで「代打の切り札」として重宝された現役時代を思わせる、突然の会長就任。同い年の中村勝広氏(61)らとともに急きょ候補に挙げられ、OB総会前の役員会で一本化された。総会で承認され、大役を授かるまでとんとん拍子だった。

 川藤 こんなもん、普通は水面下で(打診が)あるもんやろ。ギリギリに着いたら、いきなりやってくれと言われた。そんなこと考えてもなかったから、何をしたらエエねんと。

 突然のご指名に、総会後も半信半疑の様子だ。ただひとたび拝命すれば、勝負どころでの起用が多かった“仕事人”の血が騒いだ。

 川藤 こんなワシに白羽の矢が立つということは、素直にありがたいこと。先輩方が築いた伝統を継承し、トラ組の後継者を作る。それがワシらの仕事。

 現役は阪神一筋19年。年俸が半額になってもトラで現役を続けたいと直訴した浪花節スタイルから「トラの春団治」とファンに愛された。引退後も外野守備コーチ、総合コーチなどを歴任するなど、阪神とともに人生を歩んできた。

 「そんなん、投手を打つんは気合ですわ」という型破りな解説者として野球中継や情報番組で人気者になった。今年からオマリー元駐米スカウトに代わり「甲子園に駐車場はないんですわ、電車で頼んます」という球場のテレビCMにも起用された。「阪神のOB会に入ってよかったと誇りを持ってもらえる会にしたい」。降ってわいた大役に決意を新たにしていた。