広島鈴木誠也外野手(22)が29日、都内で行われた「第45回三井ゴールデン・グラブ賞」の授賞式に出席した。プロ4年目で初受賞。「神ってる」と言われた今季は守備でも存在感を見せたが、自身は「何で僕が…」と謙遜しきり。相手が警戒した強肩も評価された。来季はさらに磨きをかけて、連続受賞を狙う。

 謙虚な言葉が続いた。額の汗を拭くと、鈴木は「発表されてから本当に毎日思っています。もらっていいのかなと」と苦笑い。守備の名手に囲まれて、きょろきょろと周囲に目をやったり、黄金のトロフィーを眺めたりと、終始落ち着かない様子だった。ベストプレーも「これというのがなくて…。本当にシートノックの三塁送球くらいしか」と真剣に言う。自分の“現在地”を見失っていなかった。

 自己評価は低いが、今季の成長は明らかだった。昨年の秋季キャンプから河田外野守備走塁コーチにマンツーマンで指導を受けた。昨季までは後方の打球を恐れて深めに守り、前方の打球をケアするスタンス。しかし1歩目の練習を重ね、後方の打球への恐れが減った。守備位置も前に出たことで範囲が広がった。

 シートノックの三塁送球が相手に与えた影響も大きい。右前打で敵の二塁走者が本塁突入をちゅうちょするシーンが何度もあった。肩の強さは12球団トップクラス。「河田コーチとシートノックからしっかり投げようというのはあった。それで警戒してくれた部分はあると思う」。直接数字には表れないが、失点を未然に防ぐ働きもあった。それでも「試合で走られたら、ちゃんとそこに投げられたかは分からない。安定性はない。自信を持って刺せるようになりたい」と謙虚に前を見た。

 一方で肝っ玉の大きさもさすがだ。壇上では「顔の大きい丸選手を参考にさせてもらっています」と先輩いじり。さらに「今季はずっと丸さんに任せていたので、来季はセンターのボールをぶんどれるようにやっていきたい」と続けた。「神ってる」で話題をさらった1年は、来季につなげるためにある。「引き続き、来年もいただけるように頑張りたい」。成長期はまだまだ続く。【池本泰尚】