広島のビッグレッドマシンガンと呼ばれた強力打線をけん引したのは、赤ヘル伝統の機動力野球を体現した田中広輔内野手(27)だった。

 遊撃手として全試合フル出場を果たし、主に1番として打率2割6分5厘、13本塁打、39打点、28盗塁。リーグ10位の出塁率3割6分7厘で塁上をかき回し、同学年のキクマル(菊池、丸)と形成した上位トリオは、他球団の驚異となった。102得点はリーグトップタイの数字だ。

 強気な上、気持ちの切り替えのできる強い精神力は1番打者向きだった。相手の執拗(しつよう)なマークに死球はリーグトップの17を数えた。それでも内角攻めに果敢に踏み込み、逃げなかった。12球団最多となる679打席立っても集中力を落とさず、粘り強い打撃を徹底した。「難しかったですけど、シーズン中盤からやりがいを感じた。あまり打順にこだわりはなかったが、1番をこれからもやっていかないといけない。一番打席に立った中ではしっかり塁に出られたかなと思う」。駆け抜けた1年に手応えと自信を感じた。

 17年は「1番・遊撃」としてフルイニング出場を目標に、三振減と失策減を誓う。大下剛史や高橋慶彦、野村謙二郎など、広島の黄金期を彩ったリードオフマンの系譜に、自分の名前を刻む。【広島担当=前原淳】