うなり声を響かせ、広島新井貴浩内野手(39)がバーベルを持ち上げた。こめかみの血管が浮き出るほど力強い1歩だ。6日に広島市内のトレーニングジム「アスリート」で行う自主トレを公開。重りをつけたバーベルを両肩で担ぎ、片足ずつ前に出して沈み込む「ランジ」のトレーニングを行った。重さは計110キロで、10回を2セット。不惑でも力強さは健在だった。

 日本シリーズに進出し、優勝旅行にも参加。例年以上にオフの時間が短いのも事実で、各種目で過去最高をたたき出した昨年と比べると数値の上がりは遅い。危機感と焦りを持ちながらも「しっかり追い込んで、上げていく。やれるときに絶対にやる」と、40歳で迎えるシーズンに備えている。同ジムの平岡代表も「体の状態だけ見れば十分出来る。飛ばす体力に衰えはない」と太鼓判を押した。

 数字の目標は口にせず「とにかく優勝」と何度も言った。昨季は通算2000安打と優勝を経験しMVPにも輝いた。

 来季のモチベーションを不安視する声には「まったく問題ない。逆に燃える。もう1度うれし涙を流させてあげたい」と一蹴した。昨季はシーズン中も「休むより、もう1個追い込んだことで落ちずにいけた」。衰え知らずの不惑ボディーと、重ねた経験でチームを支える。

 すべてはチームのためだ。今季クリアした打率3割、100打点も「近づければいいけど、僕がずっと出ているようでは…」と真顔で言う。何よりも広島のことを考えるチーム最年長が、17年の連覇を引っ張る。【池本泰尚】