新旧捕手が初めての共同作業を終えた。20日、巨人阿部慎之助捕手(37)小林誠司捕手(27)が17日間の自主トレを終えてグアムから帰国。密度の濃い時を過ごし、互いにさらけ出した。「勝つために」を合言葉に阿部が小林の打撃、守備、頭、心の4テーマで成長へ導いた。

◆打撃

 5日の初練習から熱血指導が始まった。「ボールをつぶしにいけ」「バーンじゃなくてバシッだ」。連日のロングティーで柵越えは増え続けた。小林は「飛距離が延びてきた」と強振を続けた。

◆守備

 配球論だけでなく、投手との接し方、チームでの捕手の立場を説いた。送球練習で「引っかけたらノーチャンス、シュートの方がいい。誠司の肩なら盗塁阻止率4割超え」と阿部は太鼓判を押した。

◆頭

 練習後、宿舎に戻り、昼食の準備が始まる。冷蔵庫の食材を頭に入れ、即座に献立を決める。小林は「阿部さんのご飯は少なめ。フルーツはパイナップルで、わさびは必ず使う」と配球ならぬ配膳パターンをインプット。最終クール前は持参したバリカンを手渡し「GI(ジャイアンツ愛)カット」にイメチェン。伸び始めた頭髪にもメリハリを与え、切り替えた。

◆心

 阿部が今自主トレで最も重点を置いたテーマ。移動の車の中でレゲエ歌手lecca(レッカ)の「前向き」を連日流した。「悩んだ分だけ人のことも分かる。時間をかけた分だけ自分を信じられる。何回も思い出すけど過去は変えられないから。変えるのは今から先の自分」と互いの心境を捉えている歌詞を引用し、小林に語りかけた。

 共同作業の成果はキャンプイン後に真価が問われる。「誠司が多少でも変わったと言われれば俺もうれしい。自分をどれだけ表現できるかだな」と阿部。小林も「貴重な経験をさせてもらった。思いやりをプレーで表現したい」と決意を込めた。長き戦いへ、2人で入刀する。【為田聡史】