中日にドラフト3位指名された石垣雅海内野手(18=酒田南)が新境地を見せている。ひたすら打撃に打ち込んだ高校時代は野武士的な雰囲気を醸し出していたが、プロ入りが決まってからは突然オヤジギャグを連発。隠れた才能を披露し、中日ファンの心をわしづかみにしている。走攻守に加えて、笑いもとれる4拍子そろった規格外プレーヤーの原点に迫る。

 華麗なる転身を果たした。中日入りが決まってわずか3カ月。既に石垣は「ダジャレ王」の名をほしいままにしている。転機はドラフト指名3日後(10月23日)に出演した名古屋のテレビ番組だった。台本に書かれていた「ここで1発ギャグが出るか」のあおり文句に、自分の中でマグマのように眠っていた才能が突如目を覚ました。時計好きだった石垣は高級メーカー「オメガ」を強引に引用し、オヤジギャグをねじこんだ。

 石垣 このオメガは誰がつける? オメー(お前)が。

 スタジオには微妙な空気が流れ、乾いた笑いが起こった。だが、進むべき道が決まった瞬間でもあった。

 石垣が笑いに目覚めたのは小学生の頃。毎週日曜日の朝に放送されていたアニメ「かいけつゾロリ」内の「今週のオヤジギャグ」に衝撃を受けた。図書館から「ゾロリ」を借りてきて熟読するぐらい熱中した。気心知れた友達とともにコツコツとネタをつくりためていたが、そのギャグが学校生活で日の目を見ることはなかった。

 酒田市内の小学校で教頭を務める父学さん(50)は回想する。

 学さん 家でギャグを言っているのは見たことないですね…。どちらかというと、もの静かだったもので…。

 豪快な打撃とは裏腹に、石垣は人見知りで寡黙だった。その性格は酒田南に入学しても続いた。高1春からレギュラーを獲得しながらも、気を許した友達としか仲良くなれず、人前でうまくしゃべれない石垣を、あえて新チームで主将に任命したのが鈴木剛監督(35)だった。

 鈴木監督 プロに入るならコミュニケーション能力をつけて欲しかった。主将の立場でさすがにギャグは言いませんでしたが、人の前に立って話すことで徐々に社会人になるための立ち居振る舞いは学んでいったと思います。