中日ドラフト1位柳裕也投手(22=明大)に、007が早くも警戒警報だ。沖縄・北谷球場での春季キャンプ初日の1日。ブルペンで変化球を交ぜ、43球のピッチング。視察に訪れた巨人森中スコアラーは、縦に大きく変化するカーブを「今は投げる人がいない。桑田さんのカーブみたい」と驚きの声を上げた。

 力んでワンバウンドした球ですら、セ・リーグ007の視線は奪われていた。柳がこの日投じたカーブは5球。縦に鋭く落ちる軌道が特長だ。シーズン開幕戦(3月31日、東京ドーム)の相手、巨人森中スコアラーが「縦にあれだけ変化するカーブを投げる人は今いない。桑田さんのカーブみたい。あれがストライクに入ったらつらい」と頭を抱えた。広島田中スコアラーは「カーブはいいブレーキが利いている。パ・リーグだけど(楽天の)岸みたい」と例えた。想定しづらい変化をみせるボールに、各球団の偵察隊から悲鳴が上がった。

 森監督は「変化球、クイック、セットといろいろやっている。初日のブルペンにしては、みなさんが思っているよりいいという形」と、即戦力右腕の投げっぷりにうなずいた。敵も味方も絶賛の嵐。それでも、柳は「力が入った。初めてユニホームで投げて全然違った。いいところはなかった。自分の球を全然出せていない」と自己分析。ブルペン投球の締めは、ストライク判定が出るまでおかわりで3球追加するなど、こだわりのピッチング。さらに、陸上競技場での5キロ走が終わるとブルペンで投手コーチ陣が見守る中、1人黙々とシャドーピッチングを10分間続けた。

 今日2日もブルペン投球を行う予定。「元気よく、新人らしくアピールしたい。持っている力を出したい」。本人が語っているように、さらに質の高い投球が披露されれば、他球団が震え上がる日が続くことになる。【宮崎えり子】

<この日の柳クン>

 キャンプ初日で垣間見えたのは、柳の22歳らしい姿だった。これまで取材を重ねる度に「しっかりしている」、「さすがだな」と感じる受け答えや立ち振る舞いに感心させられた。それでも2月1日の柳は見たことのない面持ちでブルペンに立っていた。初めてのユニホーム。首脳陣の視線。緊張は計り知れない。取材のため投手小屋を出ると、着ていた新品のパーカーにはタグがついたまま。顔を真っ赤にして慌てて引き返した。頭がキャンプのことでいっぱいだったのだろう。

 朝、チーム宿舎の部屋の鏡に写ったユニホーム姿の自分を写真に収め、母薫さん(46)に送った。「今はユニホームに着られている感じ。早く似合うようになりたいです」とポツリ。1人でシャドーピッチングを繰り返す柳を見て、「似合う日」はきっとすぐそこだという気がしてならない。