広島ドラフト1位の加藤拓也投手(22=慶大)が宮崎・日南キャンプ初日の1日にブルペン入りし、即戦力右腕の片りんを見せつけた。緒方監督も見守る中、スライダーやフォークを交えた65球を畝投手コーチも評価。自己採点は「普通」とクールだったが、最速153キロを誇る新人右腕が、昨年のセ・リーグ王者の1軍投手枠争いを熱くする。

 昨年のセ・リーグ優勝チームのキャンプ初日には、延べ1600人のファンが訪れ、100人以上の報道陣が詰めかけた。例年以上に注目が集まる中、新人加藤はいつものようにクールだった。ブルペンで背番号13のユニホーム姿を初披露。2人の投手コーチが後ろで見守り、捕手の後ろでは緒方監督ら球団関係者が熱視線を送った。だが、新人右腕の目には捕手のミットしか見えていなかった。

 「投げづらかったですけど、そこまで力んだりしなかった。監督? いたんですか? 知らなかったです。いてもいなくても、やることは変わらないので、気にしても仕方ないかなと思います」

 ブルペンでは序盤、球が高めに抜け、低めにひっかける場面も見られた。徐々に体が温まって環境にも慣れると制球がまとまり、元広島で現ソフトバンク・サファテに似たフォームから心地よいミット音を響かせた。「まずは真っすぐをしっかり投げようと意識した。自分の持ち味だと思うので、そこを重点的にやろうと思った」。終盤にはスライダーとフォークも試投したが、全65球中8割以上が真っすぐ。少しひっかけたような球では、受けた船越のミットのひもを切る球威で最速153キロ右腕の片りんを見せつけた。

 畝投手コーチは「(指に)かかった時とかかっていない時にばらつきがあったけど、かかったときは低めにいい球が行っていた」と評価した。自己評価を求められた本人は「基準がないので、分からないです。普通じゃないですか」と苦笑い。クールな表情を貫く新人右腕も、最後にようやく表情を崩した。「疲れました。それは自信を持って言えます」。即戦力右腕にますます期待感が高まったキャンプ初日。上々の船出になった。【前原淳】