西武秋山翔吾外野手(28)が、宮崎・南郷での春季キャンプ第1クールで“神打撃”をみせた。

 室内練習場に直径約3センチの竹ざおを立て、30メートル手前からティー打撃。変わった練習に動画撮影を始めた記者を確認すると、その数球後には竹ざおに打球を直撃させ、見事に倒した。

 「左打席だとあの位置でスマホを構えているのが分かります。撮れたでしょ。良かったですね」と笑顔。年末年始のテレビ特番での企画のような神業だったが、キャンプでやるからにはきちんとした意図がある。

 秋山は「あまりそれらしく説明するのは好きではないんですが…」と苦笑しつつ、説明を始めてくれた。

 「内側からバットを出して、ほんの少しだけカット目にボールをとらえるのが、自分の理想のスイング軌道。そうすると、打球に少しフェード(右から左に曲がる変化)がかかって、センターライン上の竹ざお付近に飛びます」

 「竹ざおを立てておくと、打球の軌道が分かりやすい。もしも打球にフック回転がかかり、左から右に曲がる軌道になっていれば、それは外から巻き込むスイングになっているということです」

 斜め前からトスを上げてもらう通常のティー打撃では、投球される方向よりも右にあるネットを狙う形になり、自然と巻き込むような打ち方になってしまう。そのためティースタンド上に置いたボールを打つ。

 ボールを置く場所も、身体に近いところにする。窮屈な間合いになるが、内側からバットを出し、身体の回転軸も後方に残すことで、バットの通り道をつくって振る。

 竹ざお直撃時の打撃フォームを動画で確認した秋山は「見る人によっては左肩が下がっていると指摘するかもしれませんが、自分としてはこれがいい打ち方です」とうなずいた。

 この練習では、普段と違うバットも使っていた。グリップやグリップエンドが全体的に細く、その分ヘッド側に重心が寄ったモデル。長距離打者が使うような形だ。

 「飛距離が出るかわりに、バットコントロールが難しい。これを操ることができれば、普段のバットが扱いやすく感じます」。

 侍ジャパンの一員として出場するワールド・ベースボール・クラシック(WBC)まで1カ月。しかしキャンプ序盤、秋山は打撃練習であまり調子が上がらなかった。それでも「シーズン中もよくあることですから」と意に介さない。

 それは自分なりの修正方法を心得ているからこそだ。秋山は「スイングとか、自分の中の問題で悩む段階は、早々に終えたい。そうなれば、相手の投球に対する対処に集中できる」と言う。

 神打撃は単なる曲芸にあらず。シーズン最多安打記録保持者ならではの理詰めの調整法だ。【塩畑大輔】