広島の「第6の男」をめぐるサバイバルが熱くなった。23日、沖縄市での練習試合・KIA戦に先発した九里亜蓮投手(25)が2回を無失点の好投。引退した黒田博樹氏を参考にした投球術で新境地を見せた。先発ローテーションはジョンソン、野村のほか福井、岡田、大瀬良らがリードする。KIA戦に投げた6投手のうち5投手が先発枠を争う面々で、4年目右腕はアピールに成功した。試合は20安打の猛攻で15-1と快勝した。

 元ソフトバンクの李ボム浩の腰が砕けた。2回1死一塁。九里が絶妙な低さに制球したフォークは、三塁ゴロに。注文通りに併殺を完成させた。

 「併殺を取れればチームも乗れると思った。ヒットを打たれても低めにゴロを打たそうと思った」

 新境地を開いている。この日も145キロを計測した球質はそのままに、内なるモデルチェンジに挑む。

 「いろいろ考えながら投げました。そういう投球ができれば結果もついてくる。無意識に自然とできるまで続けたい。気持ちだけ熱く持って打者に向かっていくだけでは、長いイニングは投げられない。先発へのこだわりは強いので」

 即戦力と期待されドラフト2位で亜大から入団したが3年間で4勝。苦しむ中、引退した黒田氏や野村に気付かされた。「駆け引きだったり、打者の反応を見ながら投げている。自分も取り入れたいと思った」。この日はカウントによって打者の待ち球が変わったことを18・44メートルの空間を経て確認できたという。

 対外試合初戦だった18日のオリックス戦にも先発。今回、沖縄でのチーム初戦も先発。早くも2度の“開幕”マウンドを踏んだ。首脳陣の期待にほかならない。ジョンソン、野村、福井、大瀬良、岡田に次ぐ先発候補は誰にもチャンスがある状況。畝投手コーチは「今日もよかった。近づいているんじゃないかな」と成長を認め、九里の1歩リードをにおわせた。

 かつて広島を率いたブラウン監督は「投手には、ただ投げるだけの投手と『ピッチング』をする投手がいる」とよく言っていた。その代名詞として挙がったのが当時エースの黒田。ピッチングができる投手へ、九里が挑戦を続ける。【柏原誠】