やるしかない! 阪神鳥谷敬内野手(35)がシーズン開幕2日前の29日、日刊スポーツ独占企画「向上心」の中で新たな挑戦への思いを明かした。プロ14年目は本職だった遊撃ではなく、三塁や二塁を主戦場としてスタートする。オープン戦では慣れない2ポジションで計5失策と苦しんだが、準備期間での失敗を必ず糧に変える覚悟だ。

 不動の遊撃レギュラーとして迎えた例年の開幕と、今年のそれとでは大きく異なる。鳥谷は開幕2日前、全体練習で三塁、二塁ノックを丁寧に受け続けていた。北條との開幕遊撃バトルは後輩に軍配が上がった形。長年チームの顔であり続けた35歳の胸中とは…。

 鳥谷 う~ん…悔しさとか、そういう話ではない。ポジションが変わったからといって、今いろいろ考えても仕方がない。まずは与えられた守備位置でしっかりプレーするしかない。そこでしっかり結果を残さないと何も始まらないから。

 3月5日のオープン戦・広島戦でプロ初の二塁守備に就いた。新助っ人キャンベルの開幕三塁が厳しくなると、同12日巨人戦から12戦連続で三塁先発した。二塁で2つ、三塁で3つの計5失策。試行錯誤が故のミスが続いた。

 鳥谷 どのポジションも、いざ守るとなれば難しいもの。最初から、簡単に守れるなんて考えていなかった。もちろんオープン戦でもエラーをしないに越したことはないけど、エラーをしたらしたで、じゃあこういう打球の時はあらかじめ前に守っておいた方がいいな、とか理解できる。シーズンに入ったら、どうしても守りに入るというか、無難なところにポジションを取ってしまいがちだから。

 12日巨人戦では三遊間のゴロを好捕した後、クルリと回転してからの一塁送球がそれた。20日の敵地ロッテ戦では、平凡な三ゴロを待って捕球した流れが悪送球につながった。

 鳥谷 三塁でゴロを1つさばくにしても、球場によってポジショニングは前後左右、変わってくる。ZOZOマリン球場だったら、人工芝でも思った以上に打球が死ぬから、それも考えて守らないといけない。この投手の時はここら辺に守った方がいいとか、この打者走者だったらもうちょっと前に守った方がいいとか…。ショートなら感覚で分かる距離感が、三塁や二塁ではまだ把握できていなかった。オープン戦ではそれを試しながらやっている感じだった。

 送球でいえば、三遊間のゴロで体を回転させてから一塁に投げようとすると、角度的に一塁コーチが(送球方向に)かぶって、一塁手ではなくて一塁コーチの方に投げてしまいそうになる時もある。これはもう、練習での慣れというよりは、試合で守って状況判断しながら確認していくしかないのかなと思う。

 シーズンに入ればもう、ミスは許されない。オープン戦での失策は、貴重な糧に変えるしかない。

 鳥谷 どのポジションを守っても、不安なしで開幕に入れることはない。それがたとえショートだったとしても。やっぱりヒットが1本出るまでは不安だったり、守備なら1つアウトを取るまでは不安だったりする。それを1つずつクリアしていくところから始まる。三塁や二塁を守るとなっても、そこは変わらない。

 明日31日の開幕広島戦は三塁先発が濃厚だ。一筋縄でいかないのは覚悟の上。プロ14年目にして、新境地に足を踏み入れる。【取材・構成=佐井陽介】